東京証券取引所公表の資料によれば、2025年7月現在で、全上場会社における独立社外取締役の平均人数は3.2人となっており、取締役会自体の平均人数8.1人の約4割を占める状況になっている。プライム市場に限れば、独立社外取締役の平均人数は4.3人であり、取締役会全体の平均人数9.3人の約4割7分を占める状況になっている。ただ、コーポレートガバナンス・コードでは、プライム市場の上場会社に対しては、過半数の独立社外取締役の選任を推奨しているため、その段階にまでは到達していない。しかし本当に、独立社外取締役の人数のみを増やすことが、ガバナンスの向上に資するといえるのであろうか。あるいは、業務の執行と経営の監視・監督を峻別する形で導入された指名委員会等設置会社や監査等委員会設置会社で、独立社外取締役はその任を期待どおりに履行しているといえるのであろうか。
こうした疑問に応えるための1つの指標として、不幸にも、経営の本体を揺るがしかねない重大な不祥事や、誤った経営判断による課題が顕在化したときに、独立社外取締役が率先して事後対応を講じるとともに、社会に対して必要な説明責任を果たしてきているのかということが問われている。
というのも、2024年に顕在化した小林製薬の紅麹関連製品の健康被害に関して、2025年4月に提起された損害賠償請求に係る株主代表訴訟では、社外取締役4名を含む総勢7名の取締役に対して、連帯して約135億円の支払いが求められているからである。つまり、取締役等に対する賠償責任については、業務執行者に対してなされるのが通例であろうが、本事案では、非業務執行の社外取締役の各被告に「取締役としての善管注意義務の違反による任務懈怠があった」として責任を追及しているのである。確かに、社外取締役の第一義的役割は、経営の監督であり、その点で、同社の社外取締役はその使命を適切に履行していたのかが問われている。
一方、カルロス・ゴーン氏によって一度は奇跡の経営再建を果たしたと言われた日産自動車の場合、指名委員会等設置会社として、社外取締役の果たすべき役割に大きな期待がかかっていたのである。しかし、2018年に同氏の逮捕後、再び経営不振に陥り、遂に2025年6月には、大幅な役員変更がなされたものの、5名の指名委員会委員を含む8名の独立社外取締役は経営の監督責任を回避して全員留任しているが、これで株主の理解は得られるのであろうか。
さらに、2025年9月に不適切会計が顕在化したニデックの場合、監査等委員会設置会社として、全取締役11名のうち、7名が社外取締役であり、一見、先駆的なガバナンスが構築されていたように思われたものの、実際には、創業者の時代に合わない経営理念ないし経営行動を適切に監督できていなかったことが指摘されている。
このように、わが国を代表する著名な会社においてすら、社外取締役が自らの役割と責任を適切に果たしていないとの烙印が押されるとしたら、2015年以来進められてきているわが国のガバナンス改革に水を差すことになるのではないか。そうした状況を見るに、今や社外取締役は、受難の時代を迎えつつあるように思われる。
八田進二 青山学院大学 名誉教授