10月20日に開催された「第4回女性活躍推進ワーキンググループ」では、企業内から取締役に昇進する女性が少ないという課題に対し、意見を交わしました。女性管理職の育成は長期的なテーマであり、急激な比率向上を目指すのではなく、持続可能な制度設計と継続的な支援が不可欠であること、女性の慎重な姿勢を理解しつつ経験を積ませることの重要性や、男女問わず管理職の魅力や意義を伝えることが、次世代のリーダー育成に繋がると締めくくられました。
安齋豪格 2010年から4年間、人事部長として、女性の就業継続率向上に尽力しました。さまざまな制度改善・施策を進めた結果、現在では、女性の継続率が男性を上回る成果を得ました。これは社長の強いコミットメントと、地道な取り組みの積み重ねによるものであり、短期的な成果を求める姿勢では実現できませんでした。現在は女性管理職の比率向上が課題で、昇進前の補佐制度導入などの施策を行っていますが、これも継続的に取り組んでいかなければならないと思っています。また、男性管理職が女性社員とのコミュニケーションに苦手意識を持つ傾向があったり、制度が整ったことで「これ以上昇進しなくても良い」と考える女性社員も一定数いたりします。形式的にならない対話を通じて、意識変革や本人の意欲を引き出すことが重要だと考えます。
本島なおみ サステナビリティおよびDE&Iの担当役員として、実際に多くの意思決定を担う執行ラインの多様性が、企業のイノベーション創出や適切な意思決定に不可欠と考えます。経営会議や取締役会を単なる賛同や一般論を求める場ではなく、企業の成長に資する異論を得る場と経営トップが認識していれば、それを実現するための役員構成やサクセッションプラン、育成計画の導入につながるはずです。
そのためには、経営陣がインクルーシブなリーダーシップを体得することが重要と考えています。当社グループでは社員と役員がフラットな立場で議論するオンラインゼミを継続しています。また、女性役員自身が会議の場で本質的な意見を発することが、意思決定の場に女性が参画する意義を経営トップに体感してもらう機会になると考えます。
コールバッハ フローリアン 将来的には性別に限らず、学歴、職務経験、価値観など、多様なバックグラウンドを尊重する方へ進むべき。インクルージョンの実現には、意識的かつ継続的な努力が必要で、単に数値目標やクオータ制を導入するだけで自然に達成されるものではない。管理職を含むすべての社員が自らの無意識に持つ偏見に向き合い、異なる視点を受け入れる姿勢が重要です。さらに成果を出すためには、安心して能力を発揮できる職場環境の整備や、メンタリングやコーチング制度の導入が有効です。組織内に多様なロールモデルが存在しなければ、次世代のリーダーは育たないので、男女問わず、努力を重ねて成果を出すリーダー像を浸透させることが、持続可能な組織づくりにつながります。
小出寛子 過去に勤務した米国や英国の企業では、全社的に多様性を推進する取り組みが徹底され、全事業部横串でタレントプールを管理し、育成・登用計画を策定するなど、経営トップの強いコミットメントと継続的な努力がありました。一方、日本企業の経験では、経営トップの掛け声だけで止まっていることも多い。具体的な行動計画を求め、バイネームで候補者を挙げ、期限を設けて育成・登用を進めるなど、実効性のあるアプローチが求められます。短期的には管理職層の女性の登用加速や外部からの採用も検討し、中長期的には女性人材の数を着実に増やし、コーチングやメンタリングなど精神的なサポートも含めた支援体制を構築すべきです。女性自身のマインドセットの変革も必要です。昇進後に従来の男性的な価値観に合わせようとせずに、「違うからこそ価値がある」という気概を持ってリーダーシップを発揮することが、真のダイバーシティ推進につながると思います。
会場では、企業の現場で女性役員登用が進まない理由や、実際の取り組み、課題について多くの意見が交わされました。
若い世代は男女問わず「必要以上のことはやらなくていい」と、挑戦への意欲が低い傾向があります。失敗を許さない教育が、挑戦を避けるマインドを育ててしまっているのかも知れません。挑戦の失敗談・成功体験や昇進・経営職の醍醐味を先輩が語ることで、若手が自分ごととして捉え、リーダーを目指すマインドセットが醸成されるのではないでしょうか。(小出寛子)
ゲストメンター/安齋豪格氏
(野村総合研究所 顧問、当協会・人的資本経営委員会委員長)
ディスカッション・リーダー/本島なおみ氏
(MS&ADインシュアランスグループホールディングス 常務執行役員)
同/コールバッハ フローリアン氏
(商学博士)
リーダー・オブ・リーダーズ/小出 寛子氏
(J.フロントリテイリング 取締役議長/社外取締役 大成建設 社外取締役)