どこかに潜むブラックスワン

2023年1月11日

新井純(三井住友DSアセットマネジメント株式会社 取締役)

[ 雑誌「コーポレートガバナンス」Vol.11 - 2022年12月号 掲載 ]

世界を揺るがす出来事に直面している。

新型感染症のパンデミックにはいまだに終息の兆しは見えず、多くの人々が影響を被っている。早期終結が望まれるウクライナ危機は、世界秩序に大きな変化をもたらす予感がする。世界が多極化し、気候変動などの世界的な課題解決に必要となる協調体制に水を差す。どちらも私の想定を超えた展開である。変化し続ける世界で事業を営む企業にとり、想定を超える変化は、存続にかかわる大きなリスクになり得る。

17世紀末に豪州で黒い白鳥「ブラックスワン」が発見されるまでは、人々はスワンといえばすべて白いと信じて疑わなかった。この逸話からあり得ないことの比喩としてブラックスワンという表現が用いられるようになった。ブラックスワンにはもう一つの特徴がある。事後、起こったことの必然性が理路整然と語られることだ。あり得ないことにも発生確率は存在していた。このことは「我々はすべてを知っていたわけではない」という示唆を与えてくれる。

企業ガバナンスの重要事項として、リスク耐性を高める努力が払われている。しかし同時に、リスクの想定自体が現在の延長線上に留まっていないだろうかという危惧も抱いている。これまで世界は、想定外の出来事が折り重なって変化を遂げてきた。企業の存続に大きな影響を与えかねない「あり得ない変化」を柔軟に想像できるだろうか。

将来に対しての不透明感が高まるなか、我々はすべてを知っているわけではないということを念頭において、未来に向けての様々なシナリオを紡ぐしかない。そのなかには、企業とって都合の悪いシナリオもある。同時に新たな成長の機会をもたらすものもあるはずだ。大きな変化や危機が成長の機会を与えてくれることも歴史が物語っている。

昨今、企業の取締役会は、多能なメンバーにより構成され、様々な視点での議論を行う環境が整いつつある。豊かな発想力を有する多様性に富んだ取締役会が、どこかに潜むブラックスワンを探し求めながら、真価を発揮すべき分野である。