託された未来をひらく

2025年5月15日

高倉透(三井住友トラストグループ株式会社 取締役 代表執行役社長 CEO)

[ 雑誌「コーポレートガバナンス」Vol.18 - 2025年4月号 掲載 ]

当グループは2024年に創業100年を迎えた。商号を「三井住友トラストグループ」に変更し、パーパスも「託された未来をひらく」へ更新した。この100年、時代ごとに抱える社会課題を、信託の力を活用し解決してきた。

現代が直面する課題の一つが、「人生100年時代」の到来である。日本経済は、物価上昇を起点とした好循環の兆しが出始め、長年のデフレからの脱却が力強さを増している。政府は資産運用立国の実現に向けた取組みを加速している。当グループはアジアNo.1の運用残高を誇る資産運用会社を抱える。資産運用立国構想の下、「資産運用」を通じて、お客様の豊かな老後の実現、若年層からの資産形成の後押しをしていきたい。

では、資産形成におけるリターン確保には何が必要か。当グループは海外への投資も進めているが、当然ながら日本国内への投資も重視する。その観点で、主要投資先となる日本企業の企業価値向上が不可欠だ。企業価値向上には、企業経営の透明性、リスク管理の強化、ステークホルダーとの協働、などさまざまな要素が求められ、コーポレートガバナンスの高度化が欠かせない。当グループでは、信託銀行における取引企業向けサーベイの提供、運用会社における投資先企業とのエンゲージメントなどを通じ、企業価値向上への貢献を目指している。日本企業における株価・資本コストを意識した経営への転換も、まだ道半ばであり、今後も取り組み続ける必要がある。

信託とは読んで字のごとく「信じて託す」。さまざまな場面で受託者(フィデューシャリー)となる我々は、特に高い受託者精神が求められる。私はフィデューシャリーを「お客さまの最善の利益を第一に、自ら考え、自ら判断し、自ら行動する」ことと、社内で伝え続けている。次の100年においても、「託された未来をひらく」という思いを胸に、資金・資産・資本の好循環を生み出し、豊かな日本社会の実現に向け挑戦し続ける。

三井住友トラストグループ株式会社 取締役 代表執行役社長 CEO
高倉透