会長メッセージ

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日本取締役協会
会長 宮内義彦

経済環境

世界各国はアメリカ発の金融混乱による経済の落ち込みから、中国、インド、東アジアの成長と相まって底打ちし、徐々に回復の道を歩み始めました。それに比べ日本経済の回復はかなり出遅れてしまった感があります。輸出の回復の遅れや円高などの為替、金融機能の低下、雇用問題とデフレ経済、現政権への不安や将来の少子高齢化による人口減少などの悲観論に象徴された閉塞感となって表れています。特に株式市場においては多くの人が指摘しているとおり、2010年3月の日経平均は25年前と同水準であり、日本は四半世紀リターンを生まなかった市場という現実と、将来性の疑問から、世界のマネーは日本を超え、他のアジア諸国へ流れていこうとしていることは、極めて残念なことであります。

そのような中、我が国においても明るい光も見えてきました。輸出依存企業だけでなく、国内向けサービス産業も新しい市場を求め、中国・東アジアへ急速に展開を始めました。また円高に後押しされるように、製造業からサービス業へのシフトなど、産業構造の変化の兆しも見られるようになってきました。4月に入り為替の安定により、海外からの投資とともに、東京の株式市況も若干上向き、経営者のマインドも、不安から攻めのスタンスに転じる時期へと変わりつつあります。

現在、世界の経済システムは、社会主義の崩壊以来、IT技術の進歩とBRICSに代表される発展途上国の台頭、資源や環境の問題などが複雑にからみあって、欧米や日本中心から軸足を新興国へ一歩移しております。世界中でより多くの人々が豊かになりたいという欲求は、より高い収益や製品・サービスを求めて、その資金をあらゆる国や企業に向けています。その結果、富を生み出す中核である企業に対しても、その経営を継続的に強くするシステムであるコーポレート・ガバナンスが必要不可欠なもの、という世界共通の認識が醸成され、その概念も共通したものになろうとしています。

協会活動

昨年度の日本取締役協会は新たなメンバーとして、コーポレート・ガバナンスにおいて大きな役割を担う独立取締役に参加を呼び掛け、多くの方々に加わっていただきました。会合におきましても、経営者、専門家、学者、独立取締役などたくさんの会員のみなさまに参加をしていただき、数多くの会合を開くことができました。

各委員会・研究会におきましても、長年の成果を発表しました。企業倫理委員会は「大正に学ぶ企業倫理」という大変興味深い書籍を出版しました。ディスクロージャー委員会は四半期報告の問題点など、「ディスクロージャーの改善に関する提言」を発表、独立取締役委員会では、独立取締役の普及を目指した「独立取締役制度に関する中間提言」や「東証上場制度整備の実行計画2009に基づく意見書」の提出、内部統制研究会では「内部統制報告制度への対応状況調査」をまとめました。協会として「金融庁の企業内容の開示に関する内閣布令についての意見書」を提出しました。また、世界各国の投資家の集まりであるICGN(国際コーポレート・ガバナンス・ネットワーク)国際会議に理事を派遣し、報告会も開催しました。

本年度におきましても期の初めには、独立取締役の考え方のよりどころとなる「独立取締役ハンドブック」の出版や日本の金融機能回復に向けて「日本の銀行における株式持ち合い解消」に関するレポートの発表を予定しております。

引き続き独立取締役や経営者の参加も呼びかけます。ICGNやその他の国際会議への参加など、他団体との交流・対話も行っていきます。また金融庁・コーポレート・ガバナンス連絡会議にも参加します。そして新たに、機関投資家と経営者の対話する委員会も検討しています。

日本取締役協会は日本で唯一の経営者、独立取締役、投資家が集まって、会合セミナーから資料・情報提供まで、みなさまのコーポレート・ガバナンスについてのよりどころ、意見集約の場所となるよう活動していきます。

コーポレート・ガバナンス

昨年は経済の混乱、政治の変化とともに、コーポレート・ガバナンスにおいても変化が現れた年でもありました。本来の姿である市場からの要請ではないにしろ、金融庁や東京証券取引所の規制により、コーポレート・ガバナンスに関する事がらは、徐々にではありますが先に進んでいます。本年度においても、独立取締役や経営者の報酬など、多くの議論がされるであろうことは有意義なことだと思われます。

一方コーポレート・ガバナンスについては、その意味するところや認識に、市場、行政、経営者、独立取締役、マスメディアなどでそれぞれ違いが見受けられ、特に昨今は不祥事防止を目的とした、コンプライアンス等、その意味を狭めた理解も行われております。

コーポレート・ガバナンスとは本来、企業を持続的に発展させるためのシステムであるべきですが、日本ではその部分が十分浸透しておりません。経営者の現在置かれている状況は、過去の経験からは答えを出せないほど経営環境が変化しているなかで、将来の投資と現在の収益を確保するという困難な役割を担っており、そういう時こそ経営者の持てる力を発揮せしめる、コーポレート・ガバナンスが必要と思われます。

現実には役員報酬の個別開示の制度化にもみられるように、社会的興味を背景として、逆の効果となりそうな制度ができたことに疑問を持たざるを得ません。我が国においても国際会計基準やバーゼル規制の影響により、長年の問題点と指摘されていた銀行・企業の株式持ち合いが激減し、結果として流動化した株式を所有するのは、機関投資家になってくることが予想されます。今後は コーポレート・ガバナンスをめぐって機関投資家と経営者との対話がますます重要性を増すことは想像に難くありません。 

日本取締役協会が目指すもの

これからの日本を考えると、富を生み出す原動力である企業をいかに活性化させるかを議論し、さらに実行することが必要になってきます。企業が元気にならないと国が豊かにならないのは、世界共通の認識です。

現在世界中で企業を元気にする施策が国をあげて行われ、コーポレート・ガバナンスについても多くの議論がされています。わが国でも世界から取り残されないためにも、国だけでなく経営サイド、それを監視する独立取締役と投資サイドが一緒になって、企業の持続的発展の方策と規制やその実行について議論し考えていくことは必須であり、その場所こそ日本取締役協会が担う大きな役割と考えます。

私たちを取り巻く経済環境は依然厳しいものの、コーポレート・ガバナンスについては引き続き前に進まなければなりません。そのために、本年度も会員の皆様を中心に、より多くの方々の参加をお願いし、活発な協会活動をしていきたいと思います。

(2010年5月13日 第8回会員総会 会長所信より)