会長メッセージ

日本取締役協会 会長 宮内義彦

日本取締役協会
会長 宮内義彦

取り巻く環境

昨年末の我々を取り巻く経済環境は、必ずしも先行き明るい展望を持つことは難しい状況でした。世界の経済を牽引してきた新興国、特に中国の供給過剰に起因する経済停滞、資源、原料の暴落も加わり、先進国も力強さを欠き、欧州の不安や米国も自国のみで世界経済を引っ張る強さは見られませんでした。

国内は昨年の活気が後退し、企業業績は引き続き堅調とは言えるものの、経済全般に対し徐々に閉塞感が深まり、成長戦略への手がかりを失っていった感があります。同時に日本経済が本当に長期低迷から脱出できるのか、その為の財政、構造改革ができるのかという本質的な課題に対しての解が見つからない状況が続いております。そうした中、少なからずコーポレート・ガバナンスに関する施策は動きを見せました。

企業の成長を支える目的で作成された、コーポレートガバナンス・コード、スチュワードシップ・コードの導入・制度化により、社外取締役の選任を行う企業は大幅に増え、新しい会社法による監査等委員会設置会社への移行も多く見られました。

メディアにもコーポレート・ガバナンスという言葉が多数使われ、コーポレート・ガバナンス元年とまで表現されたように、当協会にとっても力強い前進の一年でありました。本来は機関投資家など、民間あるいは市場の力によって動くはずとも考えられますが、我が国においては官の主導により、その取組みは動きだしたといえます。

個別にも伝統ある企業の会計不正、好調企業の社長選任問題など、コーポレート・ガバナンスに関わる事例もいくつか起こり、いよいよ取締役会・取締役が何をしなければいけないのか、形から内容の実効性が問われる時期にさしかかってきました。

昨年度の活動

国内企業は見通しの困難な経済状況におかれておりますが、コーポレート・ガバナンスに対する意識は大きく変わってまいりました。

日本取締役協会は2015年度も、企業の成長を促す経営システムとして、コーポレート・ガバナンスを軸に、社外取締役・執行役向けのトレーニング、取締役会、取締役の役割、経営者の業績に連動した報酬など多くの会合を開催し、成果の発表を行いました。

国内外の関係団体の協力を得て、コーポレート・ガバナンスを取り入れ、業績を伸ばしている企業に対して、その業績や経営者の考えなどを審査させて頂き、表彰する試みを行いました。コーポレート・ガバナンスを推進する行政側とも意見交換し、協力関係を構築しました。会員間では社外取締役の紹介事例も増えました。監査等委員会設置会社、内部統制、会計、新しい制度やシステムなど各論の議論も行いました。

我々の考え方は、メディアやセミナーを通じて、多くのアピールをしてきましたが、日本取締役協会の主張が、経済界多数のコンセンサスを得るに至ったかどうかは、依然として道半ばと言わざるを得ません。

形から内容へ

社外取締役導入企業、社外取締役の数が大幅に増え、一部ではコーポレート・ガバナンスの形は整ったという意見があります。しかし、その形においても現状の2名では、取締役会の過半数には程遠く、あくまでグローバル水準に向けての第一歩を踏み出したにすぎないことを、私たちは認識しなければなりません。

同時に内容においても、改善されつつあるとはいうものの、欧米企業と比べ、資本効率いわゆる稼ぐ力は、いまだ劣っております。また社外取締役の導入目的に「大所高所からのアドバイス」と表明する企業は多く、これらの見解をより本質的な目的である「経営の監督」へと、変化させることも大切かと思います。日本企業と欧米企業の経営システムに対する考え方の違いは、当然あってしかるべきですが、それは欧米のシステムに追いつけないことから生じるものでなく、民間が独自で作り上げた、先進的なものでなければなりません。

我々が考えるコーポレート・ガバナンスの本質とは企業にイノベーションを興し中長期的に発展させることを目的にそれをチェックする仕組み・体制のことです。年間を通しパフォーマンスをチェックし、それに基づく報酬や将来に向けての施策を検討します。パフォーマンスを上げられない経営者の交代を提案し、良い経営をしている経営者には報酬で報い、将来の後継プランの確立を促します。

世界と競争する現在、企業の中長期的成長を達成するには、従来と同じことをやっていればすぐ限界に達します。何らかのイノベーションを興さない限り持続的成長は難しく、それを手助けする取締役会の運営・監督をすることがコーポレート・ガバナンスとしては必要になります。もちろん各企業により多様性や違いはあると思われますが、基本的な部分は不変だと思われます。

またイノベーションとは、必ずしも技術的な側面のみを言うのではなく、サービスや取引のやり方、ネットワークの作り方など数々存在します。

いずれにしても執行側も取締役側も、わが社の取締役会は本当に執行を監督できているのか、監督の内容は、企業の成長を後押ししているのか、市場の要求を満たしているのかなど一人ひとりのレベルを上げてその本質を学び、新しい情報を入手していく姿勢を持たなければなりません。

本年度の活動

日本取締役協会は本年度、設立15年目を迎え、コーポレート・ガバナンスの本質、目的を基本にその実効性を高めるために、さらに多くの活動をしていきたいと思います。

永く続いた日本企業の経営システムは、そうすぐに変わるとは思いません。今後5年から10年かかるかもしれません。また欧米に倣うことがすべて良いこととは言えませんが、現状劣っているところは変えなければなりません。

取締役会における監督機能をより高める為に、日本企業に足りないところを議論し、その成果を実行していきます。

コーポレート・ガバナンスついては、日本取締役協会に行けば議論に参加できる、情報の入手ができる、サポートを得られる。そのような認識を持ってもらえるよう行動し、日本取締役協会の活動が、コーポレート・ガバナンスを実践する企業の関係者や、機関投資家の一歩先を照らす存在になるよう、本年も努力していきます。

(2016年5月11日 第14回会員総会 会長所信より)