当代気鋭のオピニオンリーダーに、現代日本におけるコーポレート・ガバナンスに関するさまざまなテーマについて、ご寄稿いただきます。
早ければ今年、会社法が改正される。コーポレート・ガバナンスにかかる大改正は、委員会設置会社を導入した平成14年商法改正以降、10年ぶりである。
昨年12月に公表された会社法改正の試案では、従来の監査役会を設置する会社、委員会設置会社に加え、第3の会社形態として、「監査・監督委員会設置会社」が提案されている。
この新しい会社形態の創設自体については、法制審議会に参加する各方面からも異論がなく、間違いなく実現すると考えられる。
社外取締役は基本的に非常勤であるが、社内の常勤取締役と会社法上会社経営の取締りに関し同等の責任を負うことになっている。
オリンパス事件では、20年にわたって隠蔽され続けた「損失飛ばし」の発覚により、国際優良銘柄企業は、一企業の不正問題の域を通り越して、わが国証券市場の信頼を一気に失墜してしまったのである。とりわけ、問題視されたことは、こうした不正会計を主導していたのが、一握りのトップマネジメントであったこと、さらには、独立的な監視が期待される社外役員(社外取締役及び社外監査役)が、全く機能しなかったことから、わが国企業のガバナンスの脆弱さが国際的に露呈したことである。一方、大王製紙事件では、トップ自身が、私的遊興目的に複数の連結対象子会社から、自己取引に該当するにも拘わらず、何らの抑止機能も働くことなく、短期間に巨額の資金供与を受け続けていたことで、オーナー経営の問題点が指摘されているのである。と同時に、2008年4月から導入された内部統制報告制度が全く機能しなかったのではないか、との厳しい批判も見られるところである。
東電が東日本大震災による福島第一原発事故につきいかなる法的責任を負うかは、東電が直面している最大の課題であり、東電の現在および将来は、まさにそこにかかっていると言ってよい。もっとも東電のこの課題は、当然のことながら、東電等の電力事業者を利用しつつ原子力政策を積極的に推進してきた国の法的責任問題と不可分の関係にある。
欧州の債務危機問題の霧がなかなか晴れない。バブルの生成と崩壊、その後の問題先送りの構図はかつての日本と同じ。ギリシャ危機という形での問題の部分的顕在化は、日本で言えばちょうど97年の拓銀、山一の破たんと同じような段階と思われる。先行事例に照らして考えれば、抜本的な処方箋は、欧州に横たわる全ての不良債権(≒政府の過剰債務)を、できるだけ早く徹底的に処理することに尽きる。
東電をめぐる問題は、原発事故の賠償や今後の原発の位置づけに関心が集中している。しかし、これらと同様に、あるいはそれ以上に重要な課題は、電力市場の改革である。
今回の原発事故の後、仮に広域で需給を調整する電力市場が存在し、全国の電力会社や新規の電力事業者、あるいは一般企業がこの市場を通して電力を売買できれば、計画停電は起こらず、電力不足も軽減され、経済に与えるダメージははるかに小さくてすんだだろう。
福島第一原発事故の発生から既に半年が経過したが、その直接的な原因を分析してみれば、
しからば、これらの欠陥をもたらした根源的な原因は何であろうか。
変革期と言うより、わけのわからない時代である。日本だけ見ていると余計わからなくなるが、世界を見ているといろんなものが明確に見えてくる時代になった。
最悪に備え、楽観に対処せよ-危機管理・リスク管理の原理原則である。今は厳しくても、将来の安心への投資を怠ってはならない。まさに先憂後楽が企業ガバナンス上、また企業のサステナビリティ上、絶対的必要条件であることを痛感させた大震災であった。
PE(プライベート・エクイティ)ファンドとは、経営陣と合意の上で当該企業の株式を取得し、企業価値向上のために経営陣と共に汗をかく存在である。僭越ながら既成概念や既得権益に染まってしまっている日本の産業金融を変革し、日本企業の成長のためのリスクマネーの担い手たらんとする志の下、数十社の企業の企業経営に深く関わり、相当数の上場企業にも社外取締役を送ってきた経験に基づき、PEファンドの立場から二つの論点に絞って考えてみたい。
平成22年3月31日に株式会社東京証券取引所(以下、「東証」という)の上場整備懇談会は「上場制度整備の実行計画2009(具体案の実施に向け検討を進める事項)」に関する審議のまとめを発表した。その別紙1として、「独立役員に期待される役割」が添付されている。これは一見するとなるほどと思わせるものであり、その後の文献等もこれを所与の前提として独立役員は何をすべきか等が論じられているようである。
しかし、よく考えてみると、なぜ独立役員のみがこのような役割を期待されるのかという疑問が出てきた。そこで本稿において、この問題点を検討することとした次第である。なお、以下の記述は独立役員が取締役である場合を前提とするが、独立役員が監査役である場合にもほぼ同様のことがあてはまる。
20年程前、私がソニー株式会社の取締役になった時、英文名刺に担当部門のSenior General Manager(本部長)というタイトルと併せて、Director of the Board(取締役)と印刷した。欧米、特に米国のビジネスマンと名刺交換をする度に、相手方は私の名刺を見て少々驚くか、もしくは訝ることがよくあった。当時、米国の大企業では既にCEO、COO、CFO以外で社内のメンバーが取締役会に名前を連ねるのは稀であったからだ。
日本取締役協会 第8回定時会員総会 特別講演より
私はほぼ9年間、宮内義彦会長の下で規制改革会議の委員を務め、社会的規制を主として担当し、多くの勉強をさせていただいた。その間、宮内会長の指揮ぶりや会社経営の方法の片鱗を拝見したが、残念ながら規制改革の成果は上がらず、当時の宮内会長のお言葉を借りると「遅々として進んでいる」という、やや日本語にならないような表現だった。しかし今はむしろ逆行しており、しかも、年々そのスピードが高まっているという信じられない状況である。
今日の日本の企業社会は、企業倫理を重視する企業人と企業倫理を軽視する企業人とに分けられる。一方では、純粋に企業倫理の進歩のために努力している企業人も少なからずおり、またビジネスと社会改革とを結び付けるという社会企業家のような利他主義的な人たちも出現してきている。だが、他方では、自己の栄達や金儲けのためには、手段を選ばない企業人も依然として多い。
当協会の内部統制ワーキング・グループの座長として、投資家にわかりやすい開示という視点から内部統制報告書、内部統制監査報告書、監査報告書等を統一的に検討するという作業を行っているが、現役社外監査役かつ内部統制に関する法律実務を扱う身として実感するようになったことがある。それは次の二点である。
09年版の総会白書によればビデオやプロジェクターを利用した株主総会のビジュアル化を採用している会社は73%に上っている。対象としては事業報告や連結計算書類の内容が圧倒的である。資本金500億円超の企業では約半数がナレーションも用いて、議長の負担を軽減している。多くの会社の招集通知添付の事業報告は白黒印刷の無味乾燥な文章の羅列にすぎない。これを年配の議長が老眼鏡に掛け替えて、一字一句間違えないように読み続けるのは苦行に近い。これをカラーにしてグラフ化したり、工場や新製品の映像を挿入したりしてビジュアル化し、プロのナレーターにより説明する方が出席株主にとってわかりやすく、会社の現況の理解が進むことは間違いない。株主が飽き飽きしたという顔つきで早く質問をさせてくれとばかりにモゾモゾしているのも誠に気の毒な光景である。
株式会社のガバナンスの面で近年放置できなくなっている問題は、株主総会の権限をどうするかである。株主総会は株式会社の最高意思決定機関であることに違いはないが、そうはいっても、特に大規模の会社において、多くの株主は日常業務に関心がないし、重大な問題を処理するための十分な知識も経験も乏しい。そもそも数万人の株主をサッカー場に集めて、さあ議論しよう、さあ決議しようなどというのはナンセンスとしか言いようがない。それならば、会社法が伝統的に株主総会の決議を要すると定めてきた行為について、総会決議は不要であるという制度に改めればよいのか。もしそういうことになると、経営陣の独走になってしまうおそれはないのか。脱株主総会決議はどのようにして達成すべきなのか。一つの例で考えてみたい。
政党政治は政党が政権を運営する仕組みである。そして政党は政権を目指してお互いに競争関係にある。選挙や世論を市場と置き換えれば、市場を舞台に競争しあう企業との類推で政党を論ずることは可能のように思える。選挙市場は本来「全て」か「ゼロ」かの世界であり、シェアの増減といったベンチマークを念頭に置く競争関係よりも、ずっとタフである(「ゼロ・サム・ゲーム」の世界)。これまで日本では事実上政権交代がなかったため、競争関係は限定的な状態にあり、いわば、圧倒的に強い一政党を前提にしたシェア争いの状態にあったが、政権交代が現実のものになるにつれてこの構図は崩れた。かくしてハイリスクな競争関係が全面的に開花する時代に入った。これが政党を取り巻く環境を一変させ、内部組織のあり方を含め、従来のあり方の大胆な見直しを促すことは必至である。
今回の経済・金融危機を引き起こした要因をめぐり、短期利益志向=株主重視のアメリカ型コーポレート・ガバナンスの失敗だ、やはり長期的・全ステークホルダー志向の日本型経営が正しかったのだ、との声が一部で聞こえてくる。
日本取締役協会 第7回定時会員総会 特別講演より
2008年8月1日に大臣職を離れ、私にとっては良いタイミングではあったが、企業の方は厳しい毎日を送っていらっしゃることと思う。このところ一時期の凍えるような感じは、少し和らいだ感もあるが、まだまだ楽観できない。特に日本の場合、何ら問題が解決していない。本日は、足元の経済状況から始めて、日本が今なすべきことをお話しする。