コーポレート・ガバナンスの最前線(連載終了)

当代気鋭のオピニオンリーダーに、現代日本におけるコーポレート・ガバナンスに関するさまざまなテーマについて、ご寄稿いただきます

img141006_cgc01.jpg

コラム:カルテルへの対応策

2014/10/14

アンダーソン・毛利・友常法律事務所 弁護士 中野雄介

 私は、内外の独占禁止法関連案件を主に取り扱う弁護士であるため、カルテル事件を多数経験した立場からのコラムとさせていただく。

 カルテルの疑いがひとたび生じれば、調査等への対応に要する役職員の負担、課徴金・罰金等のペナルティー、損害賠償、弁護士費用といったコストが相当な規模で発生する。したがって、カルテルの未然防止が企業経営者の立場からは事前の目標となる。

img140616_01.jpg

コラム:コストがかからず絶大な効果を生むオーナーシップマインド〜社員と顧客との接点の濃密化〜

2014/06/16

学習院大学経済学部教授(マーケティング) 学習院マネジメント・スクール所長 上田隆穂


1.旧マルハニチロHDの旧アクリフーズ群馬工場における農薬混入事件

 この事件に関してはまだ記憶に新しい。待遇に不満を持つ契約社員による事件であるが、事件発生後の消費者に対する組織的な対応も後手にまわり、消費者の信頼を一気になくした事件だ。事件解決後に、リスク管理統括部新設などガバナンス体制再構築が検討されているが、これくらい大規模な企業になると隅々まで行き届いたガバナンス実現は容易ではない。本当に必要なのは、社員一人ひとりが企業における自己の担当領域を自身の課題と主体的に捉え、強い情熱と責任感を持って取り組む姿勢なのだ。これをオーナーシップマインド(以下OM)と呼ぶ。社員一人ひとりが真に企業を代表する意識を持つ強力な組織を創りあげる源である。だが企業規模が大きいほど実現も難しい。

コラム:ガバナンスに選択肢は必要か?

2014/01/17

青山学院大学大学院 会計プロフェッション研究科 教授 町田祥弘

間もなく会社法が改正されようとしている。今般の改正案によれば、監査等委員会設置会社という新たな会社形態が設けられるという。わが国では、2002年の商法改正によって委員会(等)設置会社が導入されて以来、監査役会設置会社との選択制が認められてきたが、今後は、3つの会社形態からの選択制となるのである。

131112_01cgcolumn.jpg

コラム:企業の不祥事を未然に防ぐには

2013/11/12

株式会社 束野ビジネス・コンサルティング 代表取締役社長 束野耕一郎

 コーポレート・ガバナンスとは、言うまでもありませんが、企業の不正行為の防止と競争力・収益力の向上を総合的にとらえ、長期的な企業価値の増大に向けた企業経営の仕組み、即ち企業統治のことです。その目的は、(1) 企業倫理の視点から企業不祥事を未然に防ぐということと、(2) 企業効率の向上、即ち企業価値・業績の向上を図るという2点にあります。本小論では前者を取り上げます。

130909_06cgcolumn.jpg

コラム:真のリーダーとは何か?―Leaders oblige.―

2013/09/09

桜美林大学教授・異文化経営学会会長 馬越恵美子

 これまでの人生の中で、この人こそリーダーだ、と思えた人が数人いる。

 ひとりはヤマト運輸の小倉昌男さんだ。彼とは家が目と鼻の先だったので、数十年もの間、家族ぐるみで親しくお付き合いをさせていただいた。はじめは近所のおじさんだと思っていたのが、次第に社会的に相当に偉い人だ、ということがわかり、びっくりしたものだ。

130708_01cgcolumn.jpg

コラム:私立大学のガバナンスと経営者の責任

2013/07/16

立命館大学経済学部 教授 稲葉和夫


1. 大学の価値と大学の果たすべき役割

「大学の価値とは何か?」に対して一言で答えるのは非常に難しい。そのことを問うこと自体で1冊の書物を完成することになるであろう。別の角度から「大学の果たすべき役割は何か?」と問い直すと、文部科学省による学校教育法第9章第84条にも記述されているように、例え私立大学であろうとも、大学は学術の中心として、長期的な視野に立って公教育としての役割を果たすことが社会的責任として求められており、設置形態の違いはあれ、学生の存在を抜きにして考えることはできない。以下、筆者の35年間の大学勤務、および6年間の企業での社外取締役の経験をもとに、現在の私立大学のガバナンスと経営者の責任について私見を述べてみたい。

130509_01cgcolumn.jpg

コラム:荒御魂を拝す。積極・進取・活動性をとりたてて

2013/05/10

朝涼法律事務所 代表弁護士 森田尚男

 日本経済が長期のデフレーション等に因り低迷する中、大震災と原発事故、領土・領海・領空への侵犯、テロの発生、外国法人等による重要拠点たる土地取得、インテリジェンスの侵害、情報操作等、想像を超える国難が、連続、多重に発生しております。直面危機から日本国家と国民を守り抜く日本国浮上の為に、企業の持続的成長戦略は如何に有るべきでしょうか。

130307_01cgcolumn.jpg

コラム:「投資家目線」から見た、日本のコーポレート・ガバナンス

2013/03/07

いちごアセットマネジメント株式会社 副社長 パートナー 福原理

 昨今米国で見られるアップル社の資本政策(capital allocation policy)をめぐっての株主提案やデル社のMBOに対する議論は、欧米の資本市場としては至極当然な一方、日本の資本市場の観点から見ると非常に新鮮に写る。

121108_01column.jpg

コラム:業績と役員報酬の関係はどのくらい大きいのか

2012/11/08

早稲田大学 商学研究科 教授 久保克行

 私の研究グループは日本の経営者のインセンティブについて、1970年代からの長期データを収集し、分析するという作業を続けてきている。本来は社長の個人報酬のデータが利用できることが望ましい。しかし多くの場合、公開されていないため、公開された情報から社長個人の報酬を推定し、その値をもとに分析を行っている。これらの報酬のデータや社長の自社株所有、さらに保有ストックオプションに関するデータセットを整備するために、有価証券報告書や様々なデータベースを用いている。

 本年10月17日、最高裁大法廷は全員一致で、2010年7月の参院選選挙区の定数配分は「違憲状態」にあると判断した。一方、結論においては、定数配分の是正にかかる合理的期間が過ぎていないとして選挙を違憲とせず、選挙無効を求めた原告らの請求は退けた。

 私はこの事件に原告代理人として関わった。

120817_01column.jpg

コラム:外部監査人から社外監査役になって

2012/08/17

公認会計士 鈴木輝夫

 本年6月で長年勤めた監査法人を定年退職して、ある上場会社の社外監査役に6月の定時株主総会で選任されました。私は大学卒業後に監査法人に就職してから、公認会計士業界で40年近く働いてきましたが、一般の会社に所属するのは初めての経験でもあり、期待と不安を持ちながら、社外監査役の仕事を開始しています。自分自身の長い外部監査人としての経験と知識を今後の人生の中で生かすためには、一般企業の中に入って、独立役員として社外監査役の仕事をこなして行くことが、最も自分に適しているし会社や社会にも貢献できるのではないかと思い、就任を決めました。

120709_02column.jpg

役員向けケーススタディ研修を通じたガバナンス・リテラシーの維持向上

2012/07/09

西村あさひ法律事務所 パートナー 弁護士 武井一浩

 コーポレート・ガバナンスの維持・拡充には、ガバナンスをまさに担っている方々の現場レベルでの職責が具体的に理解されていることが重要となります。

120515_01column.jpg

コラム:日本でのコーポレート・ガバナンスのあり方

2012/05/16

京都大学大学院 経営管理研究部 教授 川北英隆

 投資家にとって、コーポレート・ガバナンスの方法には大別して2つある。エグジット(株式の売却)か、ボイス(企業経営への口出し)かである。

 エグジットの場合、その意味を広く解釈すると、「ある企業の株式を保有していて、それを売却する方法」と、「ある企業の株式を保有していないし、今後も買わない」方法がある。一方、ボイスの場合、株式を保有していないことには、ガバナンスを行おうにも手段が閉ざされている。

120510_01column.jpg

コラム:会社法改正論議に見る既視感

2012/05/10

株式会社イトーヨーカ堂 顧問 稲岡稔

 昨年末、法制審議会が会社法見直しに関する中間試案を発表して以来、賛否両論の論議が続いている。この論議をめぐるそれぞれの(特に見直し反対派の)思考プロセスを見て、私は一種奇妙なデジャヴュ(既視感)に襲われ、フラフラと軽いめまいを感じた。それは会社法の世界にとどまらず、近・現代日本で、いまに至るまで続いてきた、定形化した思考様式、政策決定プロセスではなかったか。

120404_01column.jpg

コラム:日本の企業統治(コーポレートガバナンス)に関する事件の捉え方と株式市場の展望

2012/04/04

カブドットコム証券株式会社  取締役会長 廣中享二


1. 日本の企業統治(コーポレートガバナンス)に関する事件の捉え方

 長年にわたって隠ぺいされてきた「巨額損失隠し」が発覚した「オリンパス事件」、また、ほぼ同時期に、創業者一族の経営者が多額の資金を海外での賭博に流用していた「大王製紙事件」によって日本企業のコーポレートガバナンスを問い直す議論が持ち上がっている。

 特に、オリンパスについては先進的なコーポレートガバナンス態勢が評価されていたことや、外国人の元社長の解任が絡んでいることもあり、関係者に大きな衝撃を与えると同時に海外を含むメディア等の関心も高まった事案であったといえる。

120105_01column.jpg

コラム:委員会設置会社制度の失敗に学べ

2012/01/05

森・濱田松本法律事務所 パートナー 弁護士 澤口実


1 監査・監督委員会設置会社が誕生する

 早ければ今年、会社法が改正される。コーポレート・ガバナンスにかかる大改正は、委員会設置会社を導入した平成14年商法改正以降、10年ぶりである。

 昨年12月に公表された会社法改正の試案では、従来の監査役会を設置する会社、委員会設置会社に加え、第3の会社形態として、「監査・監督委員会設置会社」が提案されている。

 この新しい会社形態の創設自体については、法制審議会に参加する各方面からも異論がなく、間違いなく実現すると考えられる。

111222_01column-thumb.jpg

コラム:社外取締役の強化

2011/12/22

みらかホールディングス 株式会社 取締役 監査委員長 油井直次

 社外取締役は基本的に非常勤であるが、社内の常勤取締役と会社法上会社経営の取締りに関し同等の責任を負うことになっている。

111212_01column-thumb.jpg

コラム:内部統制は、経営者不正に対して無力なのか?

2011/12/12

青山学院大学大学院教授 八田進二


1.「オリンパス事件」と「大王製紙事件」が示唆するところ

 オリンパス事件では、20年にわたって隠蔽され続けた「損失飛ばし」の発覚により、国際優良銘柄企業は、一企業の不正問題の域を通り越して、わが国証券市場の信頼を一気に失墜してしまったのである。とりわけ、問題視されたことは、こうした不正会計を主導していたのが、一握りのトップマネジメントであったこと、さらには、独立的な監視が期待される社外役員(社外取締役及び社外監査役)が、全く機能しなかったことから、わが国企業のガバナンスの脆弱さが国際的に露呈したことである。一方、大王製紙事件では、トップ自身が、私的遊興目的に複数の連結対象子会社から、自己取引に該当するにも拘わらず、何らの抑止機能も働くことなく、短期間に巨額の資金供与を受け続けていたことで、オーナー経営の問題点が指摘されているのである。と同時に、2008年4月から導入された内部統制報告制度が全く機能しなかったのではないか、との厳しい批判も見られるところである。

111014_01column.jpg

リレーコラム(第3回)「東電の課題と現状―その法的側面」

2011/11/14

中央大学教授・東京大学名誉教授 落合誠一

 東電が東日本大震災による福島第一原発事故につきいかなる法的責任を負うかは、東電が直面している最大の課題であり、東電の現在および将来は、まさにそこにかかっていると言ってよい。もっとも東電のこの課題は、当然のことながら、東電等の電力事業者を利用しつつ原子力政策を積極的に推進してきた国の法的責任問題と不可分の関係にある。

111027_01column.jpg

リレーコラム(第2回)「欧州危機、政府と企業のガバナンスを考える」

2011/10/28

株式会社 経営共創基盤 代表取締役CEO 冨山和彦

 欧州の債務危機問題の霧がなかなか晴れない。バブルの生成と崩壊、その後の問題先送りの構図はかつての日本と同じ。ギリシャ危機という形での問題の部分的顕在化は、日本で言えばちょうど97年の拓銀、山一の破たんと同じような段階と思われる。先行事例に照らして考えれば、抜本的な処方箋は、欧州に横たわる全ての不良債権(≒政府の過剰債務)を、できるだけ早く徹底的に処理することに尽きる。

111006_01column.jpg

リレーコラム(第1回)「いまこそ電力市場の完全自由化を」

2011/10/06

政策研究大学院大学教授 大田弘子

 東電をめぐる問題は、原発事故の賠償や今後の原発の位置づけに関心が集中している。しかし、これらと同様に、あるいはそれ以上に重要な課題は、電力市場の改革である。

 今回の原発事故の後、仮に広域で需給を調整する電力市場が存在し、全国の電力会社や新規の電力事業者、あるいは一般企業がこの市場を通して電力を売買できれば、計画停電は起こらず、電力不足も軽減され、経済に与えるダメージははるかに小さくてすんだだろう。

100115_01column.jpg

コラム:福島原発事故の原因は国と東電のガバナンス不全にある

2011/09/06

日比谷パーク法律事務所代表 弁護士
大宮法科大学院大学 教授 久保利英明


1. 原発事故と東電・国の責任

 福島第一原発事故の発生から既に半年が経過したが、その直接的な原因を分析してみれば、


  1. 東京電力が強烈な地震や巨大な津波の発生を想定しなかったリスクマネジメントの失敗

  2. そのような東電の原発認可延長申請を厳格に審査せず、言うなりに行ってきた保安院の許認可審査の不備

  3. クライシスにあたって全く機能しなかった東電と政府の危機対応力の欠如にある

と言わざるを得ない。

 しからば、これらの欠陥をもたらした根源的な原因は何であろうか。

110707_01column.jpg

コラム:変革期の経営

2011/07/07

ウシオ電機株式会社 代表取締役会長 牛尾治朗

 変革期と言うより、わけのわからない時代である。日本だけ見ていると余計わからなくなるが、世界を見ているといろんなものが明確に見えてくる時代になった。

110609_01column.jpg

コラム:震災の影響と復興という名の成長戦略

2011/06/10

株式会社大和証券グループ本社 最高顧問 原良也

 最悪に備え、楽観に対処せよ-危機管理・リスク管理の原理原則である。今は厳しくても、将来の安心への投資を怠ってはならない。まさに先憂後楽が企業ガバナンス上、また企業のサステナビリティ上、絶対的必要条件であることを痛感させた大震災であった。

110221_01column.jpg

コラム:PEファンドの立場から

2011/02/17

ニューホライズンキャピタル株式会社 取締役会長兼CEO 安東 泰志

 PE(プライベート・エクイティ)ファンドとは、経営陣と合意の上で当該企業の株式を取得し、企業価値向上のために経営陣と共に汗をかく存在である。僭越ながら既成概念や既得権益に染まってしまっている日本の産業金融を変革し、日本企業の成長のためのリスクマネーの担い手たらんとする志の下、数十社の企業の企業経営に深く関わり、相当数の上場企業にも社外取締役を送ってきた経験に基づき、PEファンドの立場から二つの論点に絞って考えてみたい。

101202_01column.jpg

コラム:独立役員は通常役員より重い責任を負うのか

2010/12/02

西村あさひ法律事務所 弁護士 下條正浩

平成22年3月31日に株式会社東京証券取引所(以下、「東証」という)の上場整備懇談会は「上場制度整備の実行計画2009(具体案の実施に向け検討を進める事項)」に関する審議のまとめを発表した。その別紙1として、「独立役員に期待される役割」が添付されている。これは一見するとなるほどと思わせるものであり、その後の文献等もこれを所与の前提として独立役員は何をすべきか等が論じられているようである。

しかし、よく考えてみると、なぜ独立役員のみがこのような役割を期待されるのかという疑問が出てきた。そこで本稿において、この問題点を検討することとした次第である。なお、以下の記述は独立役員が取締役である場合を前提とするが、独立役員が監査役である場合にもほぼ同様のことがあてはまる。

101007_01column.jpg

コラム:コーポレート・ガバナンス 色々

2010/10/07

ソニー株式会社 ソニーユニバーシティ学長 青木昭明

 20年程前、私がソニー株式会社の取締役になった時、英文名刺に担当部門のSenior General Manager(本部長)というタイトルと併せて、Director of the Board(取締役)と印刷した。欧米、特に米国のビジネスマンと名刺交換をする度に、相手方は私の名刺を見て少々驚くか、もしくは訝ることがよくあった。当時、米国の大企業では既にCEO、COO、CFO以外で社内のメンバーが取締役会に名前を連ねるのは稀であったからだ。

100513_01column.jpg

コラム:日本的雇用慣行の再評価と労働市場規制

2010/05/13

国際基督教大学教養学部 教授 八代尚宏氏

 私はほぼ9年間、宮内義彦会長の下で規制改革会議の委員を務め、社会的規制を主として担当し、多くの勉強をさせていただいた。その間、宮内会長の指揮ぶりや会社経営の方法の片鱗を拝見したが、残念ながら規制改革の成果は上がらず、当時の宮内会長のお言葉を借りると「遅々として進んでいる」という、やや日本語にならないような表現だった。しかし今はむしろ逆行しており、しかも、年々そのスピードが高まっているという信じられない状況である。

100510_01column.jpg

コラム:企業の人倫的ガバナンスのすすめ

2010/05/10

元早稲田大学商学部教授 小林俊治氏

 今日の日本の企業社会は、企業倫理を重視する企業人と企業倫理を軽視する企業人とに分けられる。一方では、純粋に企業倫理の進歩のために努力している企業人も少なからずおり、またビジネスと社会改革とを結び付けるという社会企業家のような利他主義的な人たちも出現してきている。だが、他方では、自己の栄達や金儲けのためには、手段を選ばない企業人も依然として多い。

100309_01column.jpg

コラム:会計士と弁護士の共同作業の必要性

2010/03/09

アンダーソン・毛利・友常法律事務所 弁護士 池永朝昭氏

 当協会の内部統制ワーキング・グループの座長として、投資家にわかりやすい開示という視点から内部統制報告書、内部統制監査報告書、監査報告書等を統一的に検討するという作業を行っているが、現役社外監査役かつ内部統制に関する法律実務を扱う身として実感するようになったことがある。それは次の二点である。

100115_01column.jpg

コラム:株主総会と情報開示

2010/01/15

大宮法科大学院大学教授 野村ホールディングス取締役 
弁護士 久保利 英明氏

1.株主総会のビジュアル化の流れ 

 09年版の総会白書によればビデオやプロジェクターを利用した株主総会のビジュアル化を採用している会社は73%に上っている。対象としては事業報告や連結計算書類の内容が圧倒的である。資本金500億円超の企業では約半数がナレーションも用いて、議長の負担を軽減している。多くの会社の招集通知添付の事業報告は白黒印刷の無味乾燥な文章の羅列にすぎない。これを年配の議長が老眼鏡に掛け替えて、一字一句間違えないように読み続けるのは苦行に近い。これをカラーにしてグラフ化したり、工場や新製品の映像を挿入したりしてビジュアル化し、プロのナレーターにより説明する方が出席株主にとってわかりやすく、会社の現況の理解が進むことは間違いない。株主が飽き飽きしたという顔つきで早く質問をさせてくれとばかりにモゾモゾしているのも誠に気の毒な光景である。

コラム:脱株主総会の模索

2009/12/08

法政大学法科大学院教授・弁護士
三井住友海上グループホールディングス取締役(社外取締役)
関 俊彦氏

 株式会社のガバナンスの面で近年放置できなくなっている問題は、株主総会の権限をどうするかである。株主総会は株式会社の最高意思決定機関であることに違いはないが、そうはいっても、特に大規模の会社において、多くの株主は日常業務に関心がないし、重大な問題を処理するための十分な知識も経験も乏しい。そもそも数万人の株主をサッカー場に集めて、さあ議論しよう、さあ決議しようなどというのはナンセンスとしか言いようがない。それならば、会社法が伝統的に株主総会の決議を要すると定めてきた行為について、総会決議は不要であるという制度に改めればよいのか。もしそういうことになると、経営陣の独走になってしまうおそれはないのか。脱株主総会決議はどのようにして達成すべきなのか。一つの例で考えてみたい。

091008_01column.jpg

コラム:政党のガバナンスについて

2009/10/08

学習院大学法学部 政治学科 教授 佐々木毅氏

 政党政治は政党が政権を運営する仕組みである。そして政党は政権を目指してお互いに競争関係にある。選挙や世論を市場と置き換えれば、市場を舞台に競争しあう企業との類推で政党を論ずることは可能のように思える。選挙市場は本来「全て」か「ゼロ」かの世界であり、シェアの増減といったベンチマークを念頭に置く競争関係よりも、ずっとタフである(「ゼロ・サム・ゲーム」の世界)。これまで日本では事実上政権交代がなかったため、競争関係は限定的な状態にあり、いわば、圧倒的に強い一政党を前提にしたシェア争いの状態にあったが、政権交代が現実のものになるにつれてこの構図は崩れた。かくしてハイリスクな競争関係が全面的に開花する時代に入った。これが政党を取り巻く環境を一変させ、内部組織のあり方を含め、従来のあり方の大胆な見直しを促すことは必至である。

090907_01column.jpg

コラム:「アメリカ型コーポレート・ガバナンス」の誤解

2009/09/07

ユージン・パシフィック 代表 鹿毛雄二氏(元 企業年金連合会 常務理事)

 今回の経済・金融危機を引き起こした要因をめぐり、短期利益志向=株主重視のアメリカ型コーポレート・ガバナンスの失敗だ、やはり長期的・全ステークホルダー志向の日本型経営が正しかったのだ、との声が一部で聞こえてくる。

090514_01column.jpg

コラム:いかにして経済危機を乗り越えるのか

2009/05/14

政策研究大学院大学 副学長 大田弘子氏

 2008年8月1日に大臣職を離れ、私にとっては良いタイミングではあったが、企業の方は厳しい毎日を送っていらっしゃることと思う。このところ一時期の凍えるような感じは、少し和らいだ感もあるが、まだまだ楽観できない。特に日本の場合、何ら問題が解決していない。本日は、足元の経済状況から始めて、日本が今なすべきことをお話しする。

090331_01column.jpg

コラム:疾風と勁草

2009/03/31

朝日新聞社記者、日本コーポレート・ガバナンス・フォーラム運営委員 荻野博司氏

 これほどのスピードで、それも地球の隅々にまで不況の嵐が吹き荒れることになるとは思いもしなかった。半年前の景気見通しは何だったのだろう。赤字予想や人減らし、さらには倒産のニュースを、悪夢にうなされている思いで聞く毎日だ。