レポート"銀行の政策株式保有の完全解消に向けて"に関する意見交換会(東京証券取引所)(2010)

2010/07/02

 新しい金融の動きを理解し戦略を考える委員会(委員長 江原伸好、副委員長 川本裕子)は、表記レポートについて、東京証券取引所のみなさまとの意見交換を行いました。その概要を抜粋、掲載しています。

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日時:2010年7月2日(金)16:30~17:30 
場所:東京証券取引所
出席者:株式会社 東京証券取引所グループ 斉藤惇・代表執行役社長、宮原 幸一郎・常務執行役、株式会社 東京証券取引所 静正樹・執行役員、日本取締役協会 金融委員会 江原伸好・委員長、川本裕子・副委員長、佐々木裕子・ワーキンググループリーダー、松本茂・執務室長

□  レポートを読ませて頂きました。結論は自分自身も同じ意見でいます。
 実は歴史を紐解くと、日本の銀行の株価というのは、昔は全部百円くらいで一律でした。全然値段もつかない。投資の対象にすらならなかった。ところがこれを千円、二千円、三千円と評価し始めたのはアメリカの投資家です。その根拠は、銀行の持ち合い株だったんです。コングロマリット計算という言い方をしていましたが、例えばある銀行が日立株を3%持っている。例えば日立が800円だったとしたら、アメリカ人は3%分の24円の価値があると計算し、それを足し上げて価値を評価する訳です。

 当時日本人は企業分析とかバリュエーションの仕方を全く知らなかった。今振りかえればお粗末な手法ではあるのですが、実はその結果の数字が銀行に自信をつけ、銀行株が千円とか、三千円なんかに上がってきました。


□  その後の上昇気流の経済で、Mark to Marketすればするほど銀行のバランスシートがどんどん大きくなっていき、異常なレバレッジがかかっていった。一時はヨーロッパのローンの世界を日本の銀行がほとんど独占した。つまり、銀行の政策株というのは日本の銀行の世界への浸透戦略の後ろにあったというのは事実です。更に元々銀行が保有していた政策株の簿価はびっくりする位に安かった。70円とか60円というレベルです。ですから、こういう流れの中で相当の含み益を生み、銀行経営のバッファーになっていたのだと思います。


□  ただ、おっしゃるとおり、時代が変遷し、問題が見えてきたのも事実です。一つはご指摘されているように保有目的の不透明性ですね。相変わらず日本では「総合採算」を続けているところに一つ問題があると思います。


□  この点については、海外の機関投資家から厳しい声を聞くことがあります。例えば、会社法には、「株式会社が特定の株主に対して無償で財産上の利益の供与をしたときは、当該株式会社は、株主の権利の行使に関し、財産上の利益の供与をしたものと推定する。株式会社が特定の株主に対して有償で財産上の利益の供与をした場合において、当該株式会社又はその子会社の受けた利益が当該財産上の利益に比して著しく少ないときも、同様とする」(会社法120条2項)と書いてあります。一方で、政策株の保有状況とその保有理由の開示を見ますと、「発行会社グループと総合的取引の維持拡大を図る」と多くの先が書いておられる。これは、「わたくしは持ち合いをやって有利に取引をやります」とも読めなくは無いわけで、厳密に言えば法律違反なんじゃないか、といった話です。法令解釈については、様々な意見があるようですけれども、少なくとも、投資家から疑いの目で見られるようなことは問題でしょうし、日本のこういう「グレー」な部分はクリアにしていかなくてはいけないと思います。まずは、銀行が適切に説明責任を果たすべきであり、そして、少しずつでしょうけど、しっかりターゲットを置いて減らしていくべきです。


□  ありがとうございます。一口に銀行と言っても、政策株の解消については、様々な意見があるのだと思いますが、リーマンショックに直面した後、少なくともかなり上のレベルの方々の危機意識はすごく高まっていると思います。しかし根雪のように残っている部分を自分等で自ら解消するというのは相当なハードルで、「お上が言ってくれればやりやすい」、というところもあると思います


□  ただ、残った持ち合いを、持ち続けたら何が起こるかを、日本の金融世界に証明することが必要かもしれませんね。例えば、実際に政策株をすべて銀行が売却すると、Tier1に数兆円くらい入ってきて、安定自己資本が充実し、貸出余力が出るということかもしれないですが、それを行うと、銀行の経営のビジネスモデルが変わるとか、ROEやROAもここまで変わるのだというところが見えるとよいと思います


□  証券出身の東証の社長ということで質問させていただきたいんですが、良く出てくるのが、完全に解消させたら、一体どこが受け皿になると思われますか?


□  ひとつの可能性としては、最近株の買い取りを積極化しているという意味で日銀があるのではないでしょうか。 大量の株が一気に出ると市場の不安定要因になりますから、5年とかそういう期間をかけて、解消するのだと思います。 とはいえ、あまりROEが高くない株についてどう放出するかはポイントになるでしょう。


□  ただ、こういう下げ要因になるプレッシャーの根源になる要素が無くなれば、新たな投資家が買いやすい環境が少しずつ整ってきますよね。最近、韓国や中国企業が、日本の企業を買いたいと相談にこられたりもしますが、彼等が躊躇するのは外国企業として日本企業を買うことに対する躊躇ですから、そういう海外企業を東証に上場させるというのもあるかもしれません。


□  日本がこの状況を脱するためには、新しいガバナンスの必要性についての日本国民のリテラシーがどれだけ上がるかが重要だと思います。例えば、昨今の独立役員制度についても、未だにいろんな意見を持つ方もいます。しかし、市場がいろんな要因で曲がってしまうと、お金が集まらなくなる。アジアの金もどんどん香港に移っています。

 心地よい衰退を防ぐためには、耳障りなこともどんどん提言していかなくてはならないし、東証においてはそれを政策として実施していく必要があります。政府の見識を変えていくことも重要かもしれません。皆さんの提言に対しては、いろいろな意見を仰る方もいるかもしれませんが、正論だと思います。こういう正論を全力を挙げて皆さんに理解して頂くことが我々の使命かもしれませんね。日本の将来をよりよいものにしていくよう、一緒に頑張りましょう。


□  元気が出ました。どうも有り難うございました。


(文責:日本取締役協会)