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意見書:企業価値向上についての提言(2012)

2012/05/16

新しい企業価値・経営指標を考える委員会(委員長 東哲郎 、共同委員長 清水雄輔 、副委員長 川北英隆)は、2年弱の企業・専門家・投資家サイドのヒアリングと議論を経て、ビジネス環境の激変する今、企業価値向上の為、企業経営者に求める提言を含む報告書をまとめました。


本委員会の目的


グローバル化の進展と新興国の台頭、リーマンショックや欧州の財政危機による資本市場の激変、わが国の人口構成の高齢化、大震災の勃発など、企業を取り巻く経営環境が大きく変化し、この中で日本経済の成長は20年間停滞し、株価も世界から取り残されています。経済や企業活動の多様化、グローバル化が進んでいますが、これまでと異なり欧米以外のアジア等の新興国での展開が重要になっている一方、国内での企業活動とは異なる様々なリスクを伴うものです。

これらの経済と証券市場の現状をふまえた上で、本委員会は次の2つを目的として活動を行ってきました。

① 上場企業にとって、真の企業価値とその評価方法は何かを考え、従来の株式時価総額中心の評価方法に関して、その是非を再検討する。その上で、企業経営において指標とすべきものは何かを探る。

② 真の企業価値を向上させる手段を探る。企業価値を向上させるための手段について、参考とすべき企業の企業価値向上のための取り組みを検討し、その手段を探る。

株式の時価総額は、中長期的には企業価値に収斂すると考えられますが、短期的には株価の大幅な変動に見られるように、本来の企業価値から乖離することがあり、この乖離は、企業経営者と投資家の考える企業価値のギャップを示唆しています。

委員会の活動目的は、まずは経営者の視点に立ち、企業価値とその向上を図りたいと考えました。このことは、短期的には投資家にとっての企業価値から離れるかもしれませんが、中長期的には投資家にとっての企業価値の向上と一致するはずです。


まとめ


真の企業価値はどこで顕在化するのでしょうか。株価は中長期的に見れば、企業のファンダメンタルを反映しています。不動産と株価のバブルが崩壊した1990年代はともかく、2000年代に入って以降も日本の株価が低位で推移しているのは、GDPをはじめとする日本経済のファンダメンタルズの悪さを反映したものであり、その一方、内外で競争力とブランド力を高め、企業業績を順調に向上させてきた企業の株価は明らかに上昇しています。

企業価値を高め、それを成長させていくには、次の4つの観点から企業経営の分析と評価を実施し、将来に反映させていかなければならないと考えます。

① 成長率:新しい市場を創造・拡大し、売上高を成長させていくこと。
② 付加価値率:売上高1単位に対して十分な付加価値と利益を獲得すること。
③ 資産効率:保有資産がより多くの売上高をもたらすように図ること。
④ 資本構成:資本コストや流動性の観点から適切な資本政策を採用すること。

日本社会が高齢化と人口減少に直面している現在、グローバルな企業活動を図らなければ、高成長が困難であることはもちろん、企業活動が生み出す付加価値の増大も難しくなります。

市場の変化に応じて新しいブランドを常に提供・確立することにより、高付加価値率を求めることが重要ですが、市場が停滞すれば、すでにブランドを確立していたとしても、将来の付加価値率の低下の回避は難しい課題となります。新しい市場の創造と拡大は、高付加価値率の観点からも重要となります。

高成長率や高付加価値率に対する意識と同時に、資産の効率性や資本コストの側面から企業経営を評価することが重要であり、本報告書ではこの観点から、事業利益率と「付加利益(資本コストを上回る利益)」を取り上げました。企業活動から得られる利益率を高め、最終的にはプラスの付加利益が得られるようになれば、中長期的に株価は上昇します。

この努力と並行して、企業経営としては、将来の事業展開やリスク対応とのバランスを図りながら、無駄な資産を排除することで資産の効率性を高め、配当政策や負債の調達を工夫し、資本コストの引き下げも行わなければなりません。

一方、投資家も、短期的な株価変動を追い求めることなく、企業の真の価値を見極めるために、情報収集と分析を行い、投資するスタンスが必要となります。
日本企業が真の企業価値を形成し、それを成長させていくことにより、日本の株価が上昇トレンドに復帰することを求めたいと考えます。