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コラム:外部監査人から社外監査役になって

2012/08/17

公認会計士 鈴木輝夫

 本年6月で長年勤めた監査法人を定年退職して、ある上場会社の社外監査役に6月の定時株主総会で選任されました。私は大学卒業後に監査法人に就職してから、公認会計士業界で40年近く働いてきましたが、一般の会社に所属するのは初めての経験でもあり、期待と不安を持ちながら、社外監査役の仕事を開始しています。自分自身の長い外部監査人としての経験と知識を今後の人生の中で生かすためには、一般企業の中に入って、独立役員として社外監査役の仕事をこなして行くことが、最も自分に適しているし会社や社会にも貢献できるのではないかと思い、就任を決めました。

 これまで外部監査人として監査法人に所属し、長年に亘り上場会社等の監査現場を通じて外部の第三者として、様々な上場会社等のコーポレートガバナンスの形態や実態を見てきました。コーポレートガバナンスの形は非常に良く出来ているのですが、実態は必ずしも十分に機能していないような例や、コーポレートガバナンスの形態は非常にシンプルですが、機動的かつ有効に運営ができているケースもありました。

 今回社外監査役になってまだ間がないのですが、実感できるのは、当然のこととして外部監査人として見ていた時よりも、社外監査役になった方がより詳細な情報を入手することができ、問題となる事項の背景となる議論も十分に把握できることです。

 コーポレートガバナンスをどのように改善して、より適切かつ理想的なガバナンス体制を目指して行くかについて、数多くの議論が行われているのにも感銘を受けました。初めて参加した取締役会でも、社外取締役を始め経営陣の方々が真摯な議論をされている姿は、我が国のコーポレートガバナンスも中々良い形になってきているのだと実感致しました。自分自身も社外監査役として、是非こうした議論に積極的に参加して、会社を良くして行きたいと思っています。

 一方で、最近の企業の大型不祥事の中には、トップマネジメントの主導に起因した事件が発生しており、会社の不祥事や不正の発覚はまだまだ続いています。私は金融庁の企業会計審議会の内部統制部会委員の一人として、2006年の「金融商品取引法に基づく財務報告に係る内部統制報告書制度」の基準作りに参加した経験もあります。この制度の導入によって、各公開企業は多大な時間と労力を使って制度順守の活動を行ってきています。私自身が外部監査人として公開企業を見た限りでは、確実にグループ会社を含む企業のコンプライアンス意識は向上したと思っています。現在発覚している不正も、この仕組みの中で発見されたものも少なくないと理解しています。

 ただ、従業員のコンプライアンス意識が高まったとしても、オリンパスや大王製紙に代表されるような、経営者自身が暴走する、コーポレートガバナンスの根幹に起因するような不祥事は、内部統制報告制度では改善することはできません。公開している企業は、特定の株主や経営者のものでなく、社会の公的な器として株主、従業員、外部の取引先等を通じての社会との関係を忘れてはいけません。当協会で提唱している独立取締役や社外役員を活用して、常に監視・監督を受けられるような緊張感が必要であると強く感じます。経営者も人間ですので耳の痛い話は聞きたくないでしょうし、自分の意見を通したい気持ちはあると思いますが、裸の王様になってはいけませんし、なっていることに気づかされるような体制が必要だと思います。この点からも、実業界からの反対等によって、今回の改正会社法の中に社外取締役の義務化が見送られたことは残念でなりません。当然のことではありますが、経営者は高い倫理観を持っていなければいけませんが、同時に経営者は常に自分の判断や考えが、一般社会に受け入れられるものであるかどうかを確認できる体制をもって、常に自分に厳しくあるべきだと思っています。

 私も社外監査役一年目ですが、外部監査人のように、評論家的な立場で関与するのではなく、会社のコーポレートガバナンスの一員として経験と実績を積みながら、こうした認識も持って、役員会等で活発に発言して、コーポレートガバナンスの向上に努められればと願っております。