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コラム:日本の企業統治(コーポレートガバナンス)に関する事件の捉え方と株式市場の展望

2012/04/04

カブドットコム証券株式会社  取締役会長 廣中享二


1. 日本の企業統治(コーポレートガバナンス)に関する事件の捉え方

 長年にわたって隠ぺいされてきた「巨額損失隠し」が発覚した「オリンパス事件」、また、ほぼ同時期に、創業者一族の経営者が多額の資金を海外での賭博に流用していた「大王製紙事件」によって日本企業のコーポレートガバナンスを問い直す議論が持ち上がっている。

 特に、オリンパスについては先進的なコーポレートガバナンス態勢が評価されていたことや、外国人の元社長の解任が絡んでいることもあり、関係者に大きな衝撃を与えると同時に海外を含むメディア等の関心も高まった事案であったといえる。

 関心の高まりについては折しも法制審議会会社法制部会が「会社法制の見直しに関する中間試案」を示した時期とも重なり、今後のコーポレートガバナンスのあり方が法規制の要素も含んで経済諸団体や各企業の関係者にとっても対岸の火事ではなくなってきたという事情もあった。

 これらの事件の捉え方であるが、私はこれらの事件は従来からあった問題を浮き彫りにするものではあったが、日本に特有な事情とか制度上の問題として捉えるべきではないと考えている。例えば「大王製紙事件」は創業者一族による経営と所有の未分離からくる問題であり、「オリンパス事件」は取締役(特に社外取締役)の独立性と業務能力・専門能力の両立問題、といういずれも古くて新しいテーマである。前者については積極的な会社情報開示やガバナンス改革の努力が必要であろうし、後者は社外取締役に対する経営情報の開示・共有の仕組みを矯正する必要があるとは思うが、こうした問題をすべて制度や仕組みの問題として解決することは不可能に近い。また逆に多くのメリットを奪ってしまう可能性もあるのではないかと懸念する。例えば同族経営での強いリーダーシップの発揮や長期的視点での経営は企業発展への大きな強みでもあるし、不正・粉飾決算事件はエンロンやワールドコムの例をあげるまでもなくどこの国でも発生している事象である。

 もちろん諸制度・法制が改善されていくことに異を唱えるものではないが、このような不幸な事象に対しては結局のところ経営者が「(自分の会社を含めた)どこの企業でも起こりうる事」、という認識(危機感)をもって、それぞれの企業に合った対策を講じていく以外に解決策はない。よって法改正の基本もそういう企業の努力や創意工夫に対して優しい(必要な範囲でかつ自助努力を妨げない)ものであってほしいと望むものである。


2. 株式市場の展望

 さて、こうした問題意識が高まった中での今後の株式市場の展望であるが、結論から述べれば「本邦株式市場の信頼失墜」であるとか「投資家の日本株離れ」等の悲観的な見方に組する必要はないと考える。こうした負の事象が、多かれ少なかれ我が国の証券市場に一時的に影響を与えたことは間違いないと思われるが、オリンパス株のその後の動きを見てもわかるように、株式市場のダイナミクスは将来の蓋然性を根源とする脈流である。マイナス要因である問題発覚は、同時にその後の改善と多くの経営者の「コーポレートガバナンス」への関心の高まりという大きなプラス要因を伴うものでもある。

 折しも欧州債務問題もようやく解決への協力が見えはじめているし、国内外の長年の不況問題も浮揚への糸口が見つかりかけているようにも感じられる。全くの私見(勝手予想)であるが、私はこの一連の事件の解決(決着)、ならびに法改正が真に努力している企業に優しいものに着地することで、株式相場は長年の下降トレンドから大底を打って緩やかな上昇相場に転換するのではないかと考えている。目先の材料としては①企業収益の上振れ、②米国を中心とする景気鈍化からの復活、③円高の修正、等々が契機となろうが、実は歴史的な大転換が起ころうとしているのではないか、そして何年か後に振り返った時には、その象徴がこれらのコーポレートガバナンスを問う事件だったといえるのではないかと、ひそかに期待しているところである。