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コラム:委員会設置会社制度の失敗に学べ

2012/01/05

森・濱田松本法律事務所 パートナー 弁護士 澤口実


1 監査・監督委員会設置会社が誕生する

 早ければ今年、会社法が改正される。コーポレート・ガバナンスにかかる大改正は、委員会設置会社を導入した平成14年商法改正以降、10年ぶりである。

 昨年12月に公表された会社法改正の試案では、従来の監査役会を設置する会社、委員会設置会社に加え、第3の会社形態として、「監査・監督委員会設置会社」が提案されている。

 この新しい会社形態の創設自体については、法制審議会に参加する各方面からも異論がなく、間違いなく実現すると考えられる。

2 委員会設置会社は制度導入としては失敗であり、同じ轍を踏んではいけない

 10年前に創設された委員会設置会社は、既存の会社形態に選択肢を一つ加えたものであるが、市場による圧力等により相応の導入を期待していたはずであった。しかし、結果はそうなっていない。現在、3500社余の上場会社のうち委員会設置会社は70社に満たず、増加傾向にあるともいえない。日本を代表する企業での採用がみられるものの、導入へのハードルが高すぎた。10年が経過した段階でこの数字である以上、制度導入としては明確な失敗というべきであろう。

 コーポレート・ガバナンスにかかる大改正は、関係者の利害対立が大きく、そう頻繁に行えるものではない。今回の機会を逸すると、次の改正の機会はまた10年後となりかねない。同じ轍を踏んではならない。

3 現在、検討されている監査・監督委員会には問題がある

 現在提案されている監査・監督委員会設置会社は、同床異夢の要望に基づく妥協の産物であり、結果として制度導入のメリットは少ない上にハードルは高い。

 監査・監督委員は取締役と位置づけられるが、その実態は現在の取締役と監査役を合体させた存在である。他の取締役とは別に株主総会で選任され、その選任議案には監査・監督委員会の同意が必要であり、また、任期は他の取締役が1年であるのに対して2年とされている。一方、取締役としての権限に欠けるところはない。したがって、監査・監督委員となる取締役は取締役会において傑出した存在感を示す立場となっている。

 一方、監査・監督委員会設置会社へ移行すると、取締役会から業務執行者への権限委譲が可能な事項が拡大するが、その範囲は小さく、原則として現在の特別取締役制度と同じである。その特別取締役制度は、導入のメリットが乏しく、ほとんど利用されていない。
 このような監査・監督委員会設置会社を、果たしてどれほどの日本企業が採用するであろうか。

4 長期的な視点で導入のハードルは低くすべき

 今回の会社法改正では、是非は別として、既にグローバルスタンダードともいえる取締役会のモニタリング・モデル、つまり、業務執行者を社外取締役が監督する機関たるべきことを、意識・意図した改正が少なくない。監査・監督委員会設置会社も明確にその一つである。

 監査・監督委員会制度は、制度導入は企業の判断に委ねつつも、制度設計次第では、我が国の上場企業の社外取締役を格段に増やし、その取締役会の機能を大きく変える可能性を秘めたものである。

 しかし、既に述べたように監査・監督委員会の設計に際しては、その導入へのハードルが高くなっている。その理由は、監査・監督委員の独立性確保のためと説明されている。しかし、これは近視的な発想に思えてならない。委員会設置会社の失敗に学び、この選択を希望する企業にとっての導入のハードルを低くすべきである。

 結果として、取締役会のモニタリング・モデルを指向する立場からも、この制度の導入目的の実現により資することになろう。