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コラム:疾風と勁草

2009/03/31

朝日新聞社記者、日本コーポレート・ガバナンス・フォーラム運営委員 荻野博司氏

 これほどのスピードで、それも地球の隅々にまで不況の嵐が吹き荒れることになるとは思いもしなかった。半年前の景気見通しは何だったのだろう。赤字予想や人減らし、さらには倒産のニュースを、悪夢にうなされている思いで聞く毎日だ。

 「諸悪の根元は市場経済」。そんな声が勢いを増している。規制改革への風当たりも強まるばかりだ。大株主や機関投資家におもねり、目先の利益や配当を膨らませた経営手法こそが誤りという指摘も耳にする。もういちど政府・官僚が差配する護送船団に戻ろうとでも言い出しかねない。

 この大混乱は、90年代の初めから少しずつ積み上げてきた国内でのコーポレート・ガバナンスの論議にも少なからぬ影響を及ぼしつつある。閉ざされた取締役会に外部の空気を入れ、経営情報を包み隠さず市場に明らかにする。当然の基本原則にまで不審の目が向けられている。時価会計ルールの後退など、その最たる例だ。

 こんな時こそ、原点に戻って考える好機だと思い定めている。

 従業員を大切にする経営姿勢は、日本の強靱な競争力を支えてきた。気心の知れた経営者が、会社の将来を考えながら舵取りをつとめるのも悪いことではない。しかし、この金融危機は、国境を越えて移動する資本のエネルギーの巨大さを如実に物語っている。内向きの考えに陥ることなく、海外にも理解される透明性や経営原則を示し、それを理解する資本を呼び込むことが求められる。「疾風に勁草を知る」。各社のガバナンスの底力が試されるだけではない。ぶれない評価軸を社会に示すメディアの真価も問われている。