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コラム:「攻め」の視点でビジネスチャンスを

2014/07/16

オムロン株式会社 取締役会長 立石文雄

 世界最大のスポーツイベントの一つであるFIFAワールドカップ・ブラジル大会が先月6月13日からの一ヶ月間の熱戦に幕を閉じた。日本は残念ながら予選敗退してしまったが、今回の各国チームの熱戦をテレビで視聴していてサッカーの面白さを再認識させられた。それと同時に、前回2010年ワールドカップ終了後の4年間に及ぶ各国ナショナルチームの編成と運営が、企業の"経営"そのものに相通じるものがあると感じた次第であり、私としてとても勉強になった。

 つまりは参加各国には企業で言う経営サイドのサッカー組織委員会があり、その配下に執行サイドとしての監督以下のチームメンバーが存在している。そこには各国独特のガバナンス体制があり、その強弱が試合の勝敗にも結びついている気がしてならなかった。

 さて話は変わるが、日本国内の景気を展望すると4月の消費税増税後の反動減の落ち込みも底打ち感が出てきている。またアベノミクス成長戦略「日本再興戦略改定版」も6月末に打ち出され景況感も維持している。しかしながらこうした明るさの陰で、現在の我が国では、東日本大震災以降クローズアップされたエネルギー問題、進行する少子高齢化問題、最近頻繁に起きている異常気象問題といった社会課題が顕在化してきている。漸く取り戻しつつある明るさを確かなものにする為にも、これらの社会課題を企業としてどう解決していくべきか、企業としての貢献がますます重要になってきていると言える。

 20世紀においては、主要先進諸国は経済の繁栄を享受したが、一方で"工業社会の忘れもの"として安心・安全、環境、健康等の課題が顕在化してしまう事態となってしまった。例えばこれまでわが国では、企業が公害を出さないといった環境対策が重視されて大きな成果を生んできた。しかしそうした言わば「守り」の社会課題への対処だけでなく、これからの21世紀では社会との"共通価値の創造"(CSV)の視点がより重要になってきている。こうした経営環境の中では、「攻め」という視点でこのCSVの流れを捉え、企業の発展と社会の発展を同時に実現し、「経済的価値」と「社会的価値」の両方を高めていく経営を行っていく必要があると思っている。

 オムロンでは、創業者が1970年に国際未来学会で発表した「SINIC理論」という未来予測理論を経営の羅針盤としている。この未来予測理論では、現代から未来にかけて、人間が物質的な豊かさを手に入れた「工業化社会」が終わり、人間と機械が理想的に調和に向かう「最適化社会」という時代に2005年から移行し、生産性や効率性の追求だけでなく人間としての新しい生き方や自己実現が重要になってくる社会と予測している。この未来予測理論でも、「最適化社会」において工業社会の発展に伴う負の遺産を解決するニーズを早くから予測していた。

 現在、当社は全世界110ヶ国に事業を展開している。世界に広がるオムロン社員の心を一つにする企業理念として、「企業は社会の公器である」との基本理念を持って、事業を通じて"よりよい社会"をつくることを目指している。例えば環境分野では、日本においては再生可能エネルギーの普及への貢献として、太陽光発電に不可欠なパワーコンディショナーやその関連システムを提供。生活分野では、少子高齢化に伴う過疎地での遠隔医療機器・ネットワークを提供。こうした新しい社会ニーズを見つめ続ける事業展開をしている。その中心には、必ず"人"がいて、我社の企業哲学としての"機械にできることは機械にまかせ、人間はより創造的な分野での活動を楽しむできである"という哲学をもって、事業を推進している。

 新しい社会ニーズをいち早く感知し、技術で社会課題を解決し、社会に貢献することが、社会の発展と企業の持続的成長の両立を実現する道であると考えている。それ故にこれからの企業は、社会の新しい要請に対して事業で如何に応え、貢献していけるかという「攻め」の視点でビジネスチャンスを捉えていくことが、ますます重要になってくると言えるのではないだろうか。