140318_01genkicolumn.jpg

コラム:日本のものづくりの未来

2014/03/18

ダイキン工業株式会社 取締役会長兼CEO 井上礼之

現下の世界経済は、すさまじい勢いで変化しており、とりわけ市場のグローバル化はますます加速している。企業は、先進国・新興国の多様な競争相手とのメガ・コンペティションに勝ち残っていかなければならない。

 当社の主力事業である空調機市場は、90年代半ば、国内では成熟市場であったが、海外に目を向けると、「夜明け前の市場」が広がっていた。そこで、国内と海外という二極思考を排し、日本、北米、中国、欧州、アジア、インド、中南米、中東の世界8極を見据えた商品別のグローバル戦略を急ピッチで推進した。現在、143カ国で事業展開し、生産拠点は74ヶ所に上り、2014年度には海外従業員比率83%、海外売上高比率は73%に達する見込みと急速に多国籍化している。

 個別多様な市場のニーズに応えていくために、各国の市場に徹底的に入り込み、地域に密着したビジネスを強力に進める人材を育てていくことが重要である。そのような人に思いきって権限委譲をし、海外拠点における"遠心力"を発揮してもらっている。一方で、世界全体の大局を見据えて戦略立案し、全体最適の視点から現地のビジネスの軌道修正をする日本の本社の"求心力"を高めることも、それ以上に重要である。

 日本は「課題先進国」だと言われる。高齢化、少子化、エネルギー資源不足、都市の過密と地方の過疎、ヒートアイランド現象など、わが国が抱える課題は、将来確実に世界に広がっていく。それらの課題を克服するソリューションを提供することで、新たな市場を創造し、それを世界に展開していくことができる。

 一方で、経済成長が著しい新興国については、単にその国で勝てる商品を作り上げるだけにとどまってはいけない。新興国の過酷な市場で受け入れられた商品が、日本をはじめとする先進国に逆流する「リバース・イノベーション」が、成熟した先進国市場にも風穴を開ける大きなチャンスとなる。電力インフラ不足、人材不足、技術力不足、所得・購買力不足など、制約条件の厳しい新興国であるからこそ、その地で生まれた商品を他社に先駆けて日本市場や先進国市場にも展開していく発想が必要になってくる。

 日本企業は、海外への工場移転や販路拡大を進めてきた。これからのグローバル化は、生産拠点に加え、商品開発、マーケティングといった機能をいかにグローバルに最適配置していくかが問われる。その一環として、日本でできること、日本でやらなければならないことは何かを、突き詰めて考えていかなければならない。

 世界最大の化学メーカーである独BASF社が、兵庫県尼崎市にバッテリー材料研究所を新設した。電気自動車という新たな市場をにらんで、彼らの顧客である日本の自動車メーカーに近いところで開発するという、戦略的な投資であろう。

 当社はものづくり企業として、マザー拠点である日本の工場の価値をますます向上させていかなければならないと考えている。2015年秋には新たな研究開発拠点「テクノロジー・イノベーションセンター」を大阪府内にオープンさせる予定だ。そこでは大学や企業との協創により、オープンイノベーションを推進し、世界トップクラスの研究機関とのプロジェクトを通じて、社内の発想だけでは生まれ得ない、革新的な製品の開発に取り組んでいきたい。

 当社は今年、創業90周年の節目を迎える。日本発祥の企業としてのDNAと、これまで重ねてきた歴史に思いを致し、新たに「フロムナウ」の気概を持って、100周年に向けてさらなる発展へのスタートを切って参りたい。