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コラム:バイオの未来

2013/11/12

長瀬産業株式会社 代表取締役社長 長瀬洋

 2020年の東京オリンピック開催、一連のアベノミクスと呼ばれる経済対策など、日本人の気持ちが上向きに変わってきたように思います。失われた20年とも呼ばれますが、いわゆるバブル経済、その後のインターネットバブル、サブプライムローンといった景気変動に対処し、阪神淡路・東日本という二つの大地震からの復興を成し遂げつつ、その間、技術力や製造能力をしっかり磨き、内部留保を大きくしている企業が多いということは、強い日本は健在であり、この先の闘いのために体力を蓄えていた期間とも言えるのではないでしょうか。

 
 今後の成長を担う分野の一つに"バイオ"があり、それを支えるバイオテクノロジーの重要性はますます高まっていくでしょう。

 バイオテクノロジーと聞くと最先端の領域と受け止められがちですが、オールドバイオと呼ばれるそのルーツは古く、ワインやパンは紀元前数千年前から、日本でも酒、みそ、しょうゆ、納豆などの生産に微生物や酵素の力を活用した発酵技術が利用されてきました。現代の遺伝子組み換え、クローン、医薬品の開発、化学品生産などの先端技術はニューバイオと呼ばれるようです。近年、欧米ではバイオテクノロジーは化学工業を含む工業分野のホワイトバイオテクノロジー(ホワイトバイオテック)、がん治療用など新薬開発等の医薬および医療関連のレッドバイオテック、遺伝子工学を活用した品種改良技術等農業関連のグリーンバイオテック、土壌浄化・下水処理・廃棄物等環境技術分野のグレーバイオテック、海洋生物の技術的利用に関する分野のブルーバイオテックと適用範囲によって分類する考え方もあり、化学、製薬、食品、嗜好品、環境・エネルギー関連等、広い産業で利用され始めています。

 弊社でも昨年、"夢の糖質"とも呼ばれるトレハロースの量産化で知られる㈱林原がグループの一員となり、従来からの酵素、飼料、肥料、化粧品事業などと共に、バイオ技術を核として、「医・食・健・美」をキーワードに一層注力しています。林原は、粉飾決算、巨額な負債による倒産、その後の買収劇で、一時話題を提供しましたが、実際、本当にグループに入ってもらって良かったと感じています。他社がやらない、他社ではできない独自のテーマで研究を行う研究開発型企業、オンリーワンを目指す姿勢、企業文化が根付いており、そこで働いていた従業員の方々が最大の宝であり、また、次世代を担うおもしろそうな開発テーマもたくさん持っています。

 先程ご説明したバイオ技術の種別で言うと、遺伝子組み換えなどには頼らず、地道に蓄積してきた微生物やそれが作り出す多種多様な酵素利用技術を使った研究開発スタイルで、ユニークな糖質を作り出すオールドバイオに入ります。既存の製品はどれも国内では認知度も高く、様々な分野で浸透していますが、反面、海外市場ではまだまだというものが多いのが実情で、今後伸ばしていく余地はかなり有ります。

 バイオ分野においても、日本には林原のような世界には知られていないユニークな技術がかなり有るのではないかと思います。特に「医・食・健・美」の分野では、日本の持つ技術は安全性、信頼性を核に付加価値が認められるべきものが多いはずですが、海外市場には宣伝ベタな要素も手伝って出て行けていないのではないでしょうか。

 弊社の本業である商社業の一つの大事な使命として、日本が持つ隠れた優秀な技術を発掘し、その価値を世界にしっかり認めさせ、正当な評価とそれに見合う利益を還元させるという役目を担っていくことが、日本を元気にさせる一助になると信じ、「誠実に正道を歩む」という経営理念を持って今後も進んで行きたいと思います。