130108_column.jpg

コラム:若者に働く機会を

2013/01/08

株式会社メイテック 代表取締役社長 西本甲介

 就職活動を「シューカツ」と略すことばが流行る一方で、大卒者の就職難が続いている。少子化の一方で大学進学率の上昇によって、大卒者数が大きく増大していること、企業側が新卒採用数を抑制していること、求職者と求人側のミスマッチが起きていること等、諸要因は多々あるが、大学を出て、さあ仕事を始めようという若者たちに、その機会を十分に提供できない世の中であっていいとは到底思えない。

 仕事を通して自分自身を鍛えるべきときに、その機会がないということは、本人自身の生涯キャリアにとって大きな機会ロスであるばかりでなく、その世代が、労働市場の主戦力として活躍する30代・40代になったときに、日本全体の労働力が大きく毀損するリスクでもあるからである。つまり、大卒就職難は、10年後、20年後の大きな社会問題として認識すべき事象であり、「シューカツ」などと言って、単なる社会現象的にとらえるべきことではないと考える。

 さらに、この思考を進めると、日本の労働市場そのものが、構造的限界に来ているのではないかという認識に至る。それは、いわゆる正規雇用という考え方を主体とした労働法制の問題でもある。正規雇用とは、一般に無期雇用と同義と捉えられるが、無期雇用という雇用形態だけを「正規」と位置づける構造に限界が来ているという意味である。

 今年、新卒入社した社員が、その会社で無期雇用が実現される、つまり定年まで働き続けることができるためには、その会社が、今から40年後ないし50年後も存続していることが前提となる。今どき、それを絶対的に保証できる企業があるであろうか。現実には、多くの企業で雇用調整が行われることが日常化している。また、これからも長期に存続していく企業は、社会環境や時代の変化に対応して、大きくその業態を変えたり、場合によっては国籍さえ変えていくのではないだろうか。その現実を直視すれば、無期雇用だけを「正規」の雇用として、内部労働市場(一企業内部の労働市場)に雇用を閉じ込めようとしている今の労働法制のあり方、あるいは、その結果として成り立っている硬直した労働市場が、いかに不合理なものとなっているかは自明と考える。

 その構造を変えていく方向は、「雇用の多様化」に、国家レベルで取り組んでいくことだと思う。正規・非正規にかかわらず、働き方は、いろいろあっていいんだ、大事なことは、どんな働き方をしようと、自分が仕事を通して成長していくことなんだ、という社会通念を、一般化していくことだと考える。その延長に、まだ仕事経験がない若者たちへの就業機会の拡大があるはずである。さらに、仕事を通して成長していくことを、企業の枠を越えて実現していくというダイナミズムが生まれ、今の労働市場に質的な変化をもたらしていくはずである。