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コラム:政府・企業・NPOの連携で新たな地平を

2012/01/31

株式会社損害保険ジャパン 取締役会長 佐藤正敏

 昨年は、東日本大震災をはじめ台風12,15号そしてタイの洪水被害と、自然災害が頻発した年で、さらに欧州の財政金融危機も加わり、保険業界にとっては激動の年だった。

 損保ジャパンでは東日本大震災への対応として発生直後から東日本12か所に災害対策本部を設置し、被災地での実地調査や保険金支払い業務に社員代理店が一丸となって懸命に取り組んだ。その結果、震災発生3か月の時点で約90%の支払いが完了し、半年後には業界全体で約70万件、1.2兆円の支払いを実施することができた。地震保険金は家や家財を復旧させるためだけでなく、生活再建のためのまとまった資金としての効用もあり、今回の保険金支払い時には多くのお客さまから感謝の声をいただいた。そしてその声が社員代理店の励みになって、さらに一層迅速な支払いが促進された。

 大規模災害である地震への補償は、「地震保険に関する法律」に基づき、政府と損害保険会社が共同で運営する仕組みになっている。支払いの最前線では民間保険会社の機動力をフル活用する一方、補償の安定化のために政府に再保険の力を借りている。世界各地で大規模な自然災害が増加していく中、日本の地震保険スキームは、官民の役割分担の好事例として世界の参考になる仕組みだと感じている。

 「東日本大震災における被災者・被災地支援アンケート」(経団連調査)によると震災発生から9月末までの間の経済界全体からの支援額は約1,200億円を超え、のべ17万人の企業人が被災地・被災者に対するボランティア活動に取り組んだという。私自身が何回かボランティア活動に参加して感じたことは、被災者・被災地支援を行う企業や社員はたとえ初対面の集団であっても組織化するのが早く、その機動力とスピード感が他のボランティア集団に抜きん出ていることである。一方受け入れる側では、地元社会福祉協議会とそれに連携するNPOが、行政では把握できない地元に密着した個別のニーズにきめ細かく対応していた。1日の作業を終わって、参加者が対話集会を持つと、斬新で効率・効果の高いアイデアが次々出てきたことが印象的だった。震災復旧復興については様々なセクターが参加しながら取り組みを進めているが、まだ縦割りが強いようである。企業人を含む様々なセクターが声を出し合える場をつくることが、復興のスピードを加速するように思える。

 現在中央共同募金会の災害ボランティア支援の運営委員として、冬を迎えた東北で熱い志を持って被災者・被災地支援に携わっている多くのNPOの資金助成に関わっている。これらのNPOの志と企業の持つ組織力とを融合することも、今後の課題である。NPOは「被災地のために何とかしたい」というエネルギーは豊富なものの、資金、装備、人材などまさに組織力が十分でないところが多い。この分野で力を発揮できるのが企業である。損保ジャパンでは、かねてからNPOと企業の連携・支えあいは今後の社会のありようにも関わると思っており、環境、社会福祉の分野のNPO支援や基盤強化に力を注いできた。

 世界に眼を転じてみると、地球環境問題や貧困問題など、現在のグローバル課題は原因が複雑・複合的で、とるべき対策が多岐にわたる。そのため、政府・行政だけでなく企業・NPOなどの多くの主体がそれぞれの力を組み合わせ、連携して問題の解決に取り組む必要が高まっている。即ち、マルチステークホルダー参加による新しい国際的な課題解決の仕組みが求められる時代が到来している。日本でも2009年には、日本初のマルチステークホルダー・アプローチによる「社会的責任円卓会議」が創設され、高齢化や過疎化など地域の課題解決について、マルチステークホルダーで解決を図ることが有効だと考えられるようになってきている。

 様々なステークホルダーとの対話やNPOとのパートナーシップを重ねることが、社会に新たな価値を生み出す。そのような時代にリーダーシップを発揮し、主体的に活動するセクターとして、企業への期待は大きい。企業は自らの事業活動や社会貢献活動におけるNPOとの連携を強めるとともに、マルチステークホルダー参加型の社会づくりに貢献することが求められている。