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コラム:心に贅沢を

2011/12/22

株式会社一休 代表取締役社長 森正文

 本年3月に起こった東日本大震災からの復興に向けて、日本全体が一丸となってがんばろう、というスローガンのもと取り組んでいるが、ギリシャを発端とするヨーロッパの財政問題が引き起こしている世界的な金融不安、戦後至上最高値を更新した円高と、その復興への意気込みに水をさしてしまう気分になるような暗いニュースが続いている。なかなか明るい話題がない中で、日々一緒に過ごす家族や友人たちとの些細な日常の挨拶や会話、のんびりとした休日の食卓のひと時に改めて幸せを感じる人が多いのではないか。未曾有の大震災を目の前にすると、普段見過ごしてしまう日常のことがどれほど大切か、私自身も改めて気づかされた。

 経営者としては、このような混迷した社会の中において、数年後を見据えた短期的な経営判断から5年後、10年後を見据えた長期的な会社の成長戦略を常に考えなくてはならない。会社経営は「世のため、人のため」であり、適者生存の法則においても、それを無視し「今さえよければいい」という会社は消滅して行くと思うからだ。そして、日々仕事の合間を縫って様々な経営者・先輩方の話を聞き、本を読み、毎日が勉強である。その一方、文化・芸術に触れること、旅に出ることは、自分の視野を広げてくれるだけでなく、新たなインスピレーションを与えてくれる。直接的に仕事には繋がらないかもしれないが、このような心が贅沢な気分になる体験は、集中して仕事に打ち込め、健全な経営判断が下せる源の一つになっていると思う。

 弊社が運営する「一休.com」では、お客様に満足してもらえるサービスを提供すること、つまりお客様の「心に贅沢」な体験をしていただくことをスローガンにしている。「一休.com」からホテルや旅館、レストランを予約してくれたお客様が、家族や友人、恋人と楽しく過ごす時間や体験、つまり「心に贅沢を」してきた積み重ねは、人生において何度か直面する辛いことや悲しみを乗り越えられる強さを、知らず知らずに身につけさせてくれると思うからだ。私自身も30歳の時にC型肝炎を患って生死の境をさまよった。「病気が治ったら、本当に自分のやりたいことをして後悔のない人生にしよう」という希望を強く抱くことができる心の強さが身についていたのは、私自身の小さな「心の贅沢体験」が積み重なっていたおかげだと思う。

 さて、今回の震災では希望すら持てないのではないか、と思ってしまうほど被害が甚大であった。観光業は特に深刻である。しかし、実際に東北地方のホテル・旅館へと足を運び、直接現地の方々と接する弊社の若い営業担当の社員達が、「東北は明るく前向きに復興に向けて進んでいる」ということを肌で感じ、それをなんとしても伝えたい、と「東北力」とう特集ページを作った。豊かで美しい自然や多くの文豪や文化人を輩出した東北地方の文化レベルの高さを出張に行く度に感じ取り、より多くの人に東北地方の魅力を改めて知ってもらいたいという感受性や意気込みが、伝わってくるページである。彼らが日々の仕事に追われ、自分の仕事や勉強以外のことに無関心であったなら、このような企画は成り立たなかったと思う。「心に贅沢を」というスローガンを、社員自らが仕事にも活かしていることを感じ、うれしかった。

 弊社のサイトを利用して多くの方に「心に贅沢体験」をしていただき、それが人々の希望に繋がる一端を担えるようになったことは、私の一番の喜びである。また、その意気込みを感じてくれている若い社員達を通して、日本の未来もまだまだ悲観するには早すぎると実感している。