thum151026_1.jpg

リレーブログ:コーポレート・ガバナンスで重要なこと

2015/10/27

テルモ株式会社 代表取締役会長 中尾浩治

本年5月1日に施行の改正会社法で、機関設計の選択肢として新設された、監査等委員会設置会社。

第5回は、本年6月の株主総会で、早くも移行を果たしたテルモ株式会社の代表取締役会長 中尾浩治さんに、コーポレートガバナンスについてのお考え、移行へのを想いをお尋ねしました。

 コーポレート・ガバナンスが実効を上げるには、仕組み、人材、風土の三つの要素が大事である。その一つ一つが不可欠であり、例えば、仕組みさえあれば、という考えは、カバナンス上、大きな問題を生じ易い。

 仕組みについては、当社は今年の6月の株主総会で監査等委員会設置会社に移行した。監査等委員会の他に、コーポレート・ガバナンス委員会を設置している。この委員会ではガバナンス全体、指名・報酬などを審議している。過半数は社外取締役で構成。社長、会長の指名については、重要性に鑑み、近々、別委員会を設けることを考えている。

 次に人材であるが、特に社外取締役について述べておきたい。誰にお願いするか、という点であるが、ガバナンスのことを理解し社外取締役を経験した人材のプールが全般的にまだ少ないこと、女性についてはそれ以上に厳しい状況であることは悩みであるし、この状況は今しばらく続くであろう。対象者の大きな選定ガイドラインとしては、「会長や社長と近い関係にない(むしろ全く付き合ったとのない人)」、「出身組織や本人のブランド(著名性)は考慮しない」、「キャリアや多様性の組み合わせを大事にする(トップ経験者、弁護士、会計士、医師、男性と女性など)」、「トップに対して率直に具申できる」などを設定している。礼儀として相手を慮ることはある程度必要ではあるが、会社のステークホールダーの観点から、礼儀よりも、意味ある意見・言い難い意見を率直に述べることのできる人材に参加してほしいと思っている。

 最後に企業風土という点だが、「自由闊達」、「透明性」、「悪いニュースほど早く伝達する」などの取組みを推進している。自由闊達は、Power Distanceに加え、日本特有のSeniority Distanceも考え、肩書きではなく、「さん」でお互いに呼ぶなど、特に上司に対して意見を言える雰囲気づくりを大事にしている。また会長や社長などに対して部下が年に一度、匿名で経営姿勢などを評価し(項目別に点数をつけ、止めてほしいこと・やってほしいことについてのコメントを書く)、その結果を社内向けWebサイトに掲載し全社員に公表している(関心が高くサイトのアクセス回数は社内報の中でも最も多い)。 細かいことではあるが、取締役会については議長を除き、毎回、ランダムに席を決め、隣が違った者同士になるような工夫も凝らしている。悪いニュースを早くはその言葉の通りであるが、初期段階の報告で、報告者に対してあまり詳細を問い詰めないこと、叱らないことを大事にしている。ともかく、何がどこまで悪いニュースか判断できない状況でも悪いニュースと思ったら、報告だけで良いので早くしてくれ、という考え方である。取締役に関するルールは内規が多いと聞くが、当社では、恣意性・ブラックボックス化を避けるため、内規ではなく、取締役会などで承認された正式規程化している。その他、皆さんも取り組まれていると思うが、企業倫理ホットラインを設置しており、プライバシー保護や不利益の禁止を徹底し、正社員・派遣社員の区別なく誰でも報告出来るようにしている。

 カバナンス・コードへの対応などで、まだまだ多くのことに取り組まなければならないが、経営の監督という点では、経営者を信頼・支援して応援することと同時に経営者の評価・人事が不可欠である。この点は、社外取締役が果たすべき一番大事な義務と責任であろう。

 外国人投資家による日本株の持株比率が全体の3割を超え、さらに9月第一週には売買シェアで72.5%という最高値を記録したと聞く。このように、好き嫌いに関わらず、上場企業はグローバルの金融や政治に組み込まれている。日本の株式市場や日本の上場企業がこのような状況を、特に欧米のガバナンスの仕組みを無視することは出来ない。

 世界のガバナンス・レベルから周回遅れと言われていたが、今回、安倍政権主導の下大きく進展した。次のステップでは、出来れば世界に誇れるユニークなガバナンスの仕組みが日本で議論され、世界に発信されることを期待したい。


次回は、官公庁等から数多くのコーポレート・ガバナンスに関する研究委託を受けている、コーポレート・プラクティス・パートナーズ株式会社 代表取締役・明治大学特任教授の関孝哉さんに、イギリスのコーポレート・ガバナンス事情についてお聞きしてみたいと思います。


photo151026_01.jpg
中尾浩治(なかお こうじ)

広島県尾道市出身。1970年慶應義塾大学法学部を卒業後、当時の仁丹テルモ株式会社に入社。海外営業、生産、経営企画、海外子会社の経営、M&Aなどに携わる。約15年間の欧米駐在を経て、1995年取締役に就任。2011年代表取締役会長に就任。
現在の主な公職は、一般社団法人日本医療機器産業連合会会長、健康・医療戦略参与、日欧ビジネスラウンドテーブル プリンシパルメンバー、一般社団法人日本取締役協会幹事等。