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リレーブログ:ガバナンス・コードが真に目指すこと

2015/07/14

株式会社 大和証券グループ本社 名誉顧問 原良也

2015年の株主総会集中シーズンも終わりました。独立取締役の選任、ROEの向上策などへ株主からの要求が話題になり、コーポレートガバナンス改革を進めていく上で、今後の課題も出てきました。

第4回は、企業経営者として、コーポレートガバナンス改革に取り組まれた、大和証券グループ本社 原良也 名誉顧問にお聞きしました。

 私が大和証券グループ本社を、日本の上場企業で初めて純粋持株会社の形態に移行させたのは1999年でした。連結決算への移行を控え、経営の透明性と、金融ビッグバンという大きな環境の変化に対応するためでした。今や多くの企業が持株会社になりましたが、当時はなぜ持株会社にと、ずいぶん否定的な見方もされました。2003年の会社法改正を経て、2004年にコーポレートガバナンスの効率性、公益性、適法性の向上を目指し、委員会設置会社へ移行しました。

 そして今回、会社法改正による監査等委員会への選択移行が実現し、金融庁、取引所によるコーポレートガバナンス・コードも策定されました。このガバナンス・コードを見れば、その目的からして、実行あらしめるには委員会設置会社が適していることが分かってもらえると思います。この6月には200社近くの監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社への移行がありましたが、ここ2〜3年で多くの企業が委員会設置会社になると思われます。

 今回のガバナンス・コードを見てみましょう。

 なぜ、このコードは成長戦略の1丁目1番地になるのか。なぜ、攻めのガバナンス・コードなのか。さらには、ガバナンス・コードは企業が持続的に成長し、長期的な企業価値を最大化させる基盤となるか。

 日本企業の競争力の評価は低く、それ以上にガバナンス力の評価はもっと低いのです。取締役会の活力、能力であるガバナンスの力は、企業の競争力を左右することは間違いありません。だからこそ、ガバナンス・コードが導入されるのです。

 第四章「取締役会の責務」を見てみましょう。
この第四章はコードの中心であり、多くの部分を占めていますが、ここに書かれた基本原則、補充原則こそ、まさに攻めのガバナンス・コードであることは、具体的にはっきりと示されています。

 取締役会の役割と責務は、①企業戦略(中期経営計画)の大きな方向性を示すこと、②適切なリスクテイクを支える環境の整備を行うこと、③経営陣に実効あらしめる結果が出るように、高い監督を行うこと、つまり取締役会は戦略を作り、その結果を出すことに、監督として責任を持つこと、そしてそこに高い知見と経験を持つ社外取締役の活躍と仕事が期待されます。取締役会と経営陣・幹部は、中期経営計画はコミットメントであるとの認識に立って、目標未達の場合は、その原因や、取った対応の内容を株主に説明を行うこと、ここまで言い切っています。

 そして第五章「株主とのエンゲージメント」ですが、私は厳しい投資家こそ、企業経営者を鍛え、結果、企業の収益力や成長力が向上すると思っています。企業の競争力の最たるものは「持続的成長力」そのものであり、この力こそ、全てのステークホルダーを満足させることになり、企業に大きな成長をもたらすパワーになります。そのためにもステークホルダーとは、緊張感のある関係を維持しながら、目的を持った対話を続け、課題解決と環境の変化に対応していくことが、ガバナンスの大きな柱であり、これも攻めのガバナンスなのです。

 今回のガバナンス・コードにおいて、特に強調したいのは、監督と執行の分離です。それはこのコードを実効あらしめるためにも、このことが非常に重要になります。原則にも取締役会は独立した客観的立場から監督を行うことが、重要な役割・責務と明記されています。上場会社として、客観性・透明性を確保し、利益相反を排除するガバナンスの根底は、この監督と執行の分離にあります。会社法制は、これまでコンプライアンス重視、監査役の監査機能の強化には取り組んできましたが、取締役会の監督機能の強化には向き合わず、株主総会中心主義でした。しかし現実には、取締役会は経営者の評価や利益相反を防ぐための環境整備には有効、適切には機能しないという市場の声がありました。

 その機能を委ねる先は、取締役会であることは言うまでもありません。取締役会が経営全般の評価、監督機能の中核を担い、経営者の資質や成績の評価や利益相反への対応という役割を果たすのだから、自分が自分の評価や監督をするという矛盾を回避する上で、ガバナンスとマネジメントを分離することは望ましいことになります。

 執行役員制度が導入され、独立社外取締役も複数投入されることになり、監査等委員会設置会社も選択制ですが導入されました。取締役会の機能強化、特に監督機能の強化も手当されてきましたが、いわゆる監査と執行の分離の必要性への理解は、十分にされていないように思われます。

 このたびのコードを実効あらしめるには、言うまでもなく監督と執行の分離なくして、適えられません。

 最後に経済産業省が、企業経営者と投資家との対話を促進するために作成した質問書を紹介します。これは、持続的な価値創造を目指す経営は、自立と他律の適切なバランスの上に成り立つもの、と言う前提に立って作成されたものです。

○監督と執行の分離についての考え方に基づいて、取締役会の役割をどのように考えるか。
○経営体制の選択は、取締役会の役割についての考え方とどのように関係しているか。
○取締役会の役割に関する考え方に基づいて、社外取締役にどのような役割を求めるか、期待するか。
○監査役会制度を選択している場合、監査役と取締役の役割分担をどのように考えるか。

 上記質問に皆様はどう答えますか?真剣に考えてみてください。

 3月決算会社は本年12月末までにガバナンス・コードを作成する必要があります。取締役会の相当な議論と覚悟が求められています。市場の期待も大きいでしょう。どのようなガバナンス・コード作成・確立するかで、その企業の将来の企業価値が見えてくると言っても過言ではないでしょう。


次回は、本年6月の株主総会で監査等委員会設置会社に移行を果たした、テルモ株式会社の代表取締役会長 中尾浩治さんに、コーポレートガバナンスについてのお考えをお聞きしてみたいと思います。


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原良也(はら よしなり)

昭和42年 大和證券株式会社 入社。取締役 事業法人営業副本部長・総合法人営業副本部長、常務取締役 法人副本部長・エクイティ本部長を経て、平成9年に代表取締役社長に就任。11年 株式会社大和証券グループ本社 代表取締役社長 兼 CEO、大和証券株式会社 代表取締役社長 、16年 株式会社 大和証券グループ本社 取締役会長、20年に最高顧問、24年より現職。
公職に日本経済団体連合会・評議員会副議長、民間外交推進協会副会長(現任)その他、日本電気、東京証券取引所グループ、東京証券取引所、京セラ、ウシオ電機(現任)社外取締役・社外監査役を勤める。